▼第十章 中編
「アル!」 「アルさん!」
アルの姿を見て、必死に呼びかけるヘレンとリバル。しかし、アルからは返答はない。
「アルの心配はしてないでー!」 「自分達の心配をしたらどうです ? 」
するとレイブンは、カートリッジフルドライブしグラウンド・ガインをグランドフォルムへ変形させ、超巨大な鉄槌へと姿を変える。一方ノインは気功を最大限に溜め、「阿修羅覇王拳」を打ち込む体制になっていた。
「くッ!」 「私達もここで踏ん張らないと…。」
するとリバルも気功を溜め、標的をノインに変更し、リバルはノインから学んだ「阿修羅覇王拳」を真似した「阿修羅鳳凰拳」を打ち込む体制になる。そしてヘレンは、西洋系のブレードにさらに小型ナイフを数十本集結させ、巨大な大剣へと姿を変え、レイブンに標的を変える。
「天地爆砕──」 「阿修羅──」 「セルリアン──」 「阿修羅──」
そして4人の技が炸裂する。
「グラウンドクラアァァァッシュ!」 「覇王拳!!」 「バニイィィィッシュ!!」 「鳳凰拳!!」
リバルはノイン、ヘレンはレイブンと技が激突する。周囲は技の激突による爆発によって光に包まれた。
「「うおぉぅ!」」 「うわぁ!」 「くぅッ!」
4人の技の激突により爆発が起き、4人とも吹き飛ばされ壁に激突する。
「おやおや、皆さん見っとも無いですね…。」
一人だけその場に立つノワール。彼の後ろには、依然と竜巻が渦巻いている。
「くっそぉ…。」 「……うぅ……。」
「…………。」 「…………。」
4人ともゆっくりと立ち上がる。
「「はぁ…はぁ…。」」
リバルとヘレンは、息が荒い。
「ちょっとやると思ったが…この程度とはな…。」 「ガッカリです…。」
レイブンとノインは、呆れ顔で二人を見下す。
「はぁ…はぁ…。(このままじゃ、殺られるのも時間の問題。どうしよう…。)」 「…………。(アルさんは気絶して動けない、今戦えるのは私とヘレンだけ。どうすれば…。)」
リバルは、気絶しているアルを横目で見ると苦い表情で舌打ちする。
そしてアルは…。
「……………。(ここは……どこだ ? )」
ふと、眼を開けると無数に並ぶ墓が…空は赤く、雷鳴が響く。
「……ぅッ!(頭がいてぇ…でも此処はどこなんだ ? )」
アルは、手で頭の痛さを抑えながらゆっくりと歩きはじめる。
「…………。(そう言えば、戦いはどうなったんだ…。)」
ふと、先ほどの戦いを考えながら墓地を歩く。
「……ん、誰だ ? 」
遠くの方に3つの人影が…アルは、少し足を急がせる。
「……ッ!ノワール!? 」
すると、遠くに居た3人はゲヘナの騎士団隊長陣であった。
「アル殿、よくここに来て下さいました。」
「な、なんだよ、俺を今から殺ろうってのか ? 」
先ほどの戦いを思い出し、少し後ずさりするアル。
「違います、これを見てください。」
するとノワール達は、それぞれの愛武器を取り出す。ノワール達の武器は異様な形はしておらず、本来の姿になっていた。
「ッ!? どういう事だ、お前ら。」
「アルさん。私達は既に此処、「騎士達の天園」へ居るのです。」
するとノインが説明を始める。
「「騎士達の天園」 ? 聖書「騎士の涙」に書かれていた、騎士達が死に逝く場所と書かれているあの「騎士達の天園」か ? 」
アルは眼を丸くしながらノインに質問すると、ノインはゆっくりと頷いた。
「じゃあ俺は、死んだのか ? 」
その言葉にノインは首を横へ振る。
「アルさんは呼ばれたのです、私達に。」
「呼ばれた ? 」
全く何を意味しているか分からなく首を傾げるアル。
「今、お前を除いてヘレンとリバルが闇に侵された俺達と戦っている。俺達は、アルにある事を伝える為に呼んだんだ。」
「ある事 ? それは一体…」
アルは、固唾を呑みながらそのある事を聞こうと待つ。
「今、リバル達が戦っているこの私達を殺してください。」
その言葉に、アルは仰天する。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!それじゃあお前達が…あの世へ逝っちまうじゃねーか!」
その事にレイブンは鼻で笑い。
「フッ、言っただろ俺達は既に此処の「騎士達の天園」に居るって。だから、もう助からないんだよ。闇に負けた俺達にも責任がある。」
「だが!」
「アル殿、私達の身体が滅びようと魂はあなた方へ宿るはずです。」
ノワールに続いてノインも。
「アルさん、シャドーを倒す為にも…。」
「お前ら……。」
「ほら、だから行ってこい!ゲヘナの為にも、異世界の為にも!」
レイブンは、笑顔でアルの背中を叩く。
「…………。」
涙ぐむアル。
「「「ゲヘナの栄光へ!」」」
3人がそう言うと、3人は少しずつ光となり消えた。
「……お前ら……くそ…。」
アルは、流れる涙を拭う。
「……お前らの想い。決して忘れない…。」
「ッ!」