▼第十二章 中編
テイク・クライアントは、後ろに振り向いてこう呟く…
「それは、この闘いが終われば嫌でも解る…。」
テイク・クライアントはそう言い、次元空間に入り転移した。
「くッ…。(また、また負けた私は…。)」
悔しさの余り涙が溢れ出す。すると…
「(シグナム…シグナム。)」
「(ッ!主…。)」
はやてからの念話だった。
「(どないしたん、烈火の将シグナムがみっともないやん。)」
「(申し訳御座いません我主…今何処に ? )」
「(気にしなくてええよ、今アースラにおる。シャマルも一緒や、戻るか ? )」
はやての言葉を聞いて、少し落ち着いたのか涙が止まった。
「(はい、一時撤退します。)」
「(分かった、今から転送するわ。)」
そしてシグナムは深い傷を負ってアースラへ帰還した。現在、ゲヘナ城に居るのは、アル、ヘレン、リバル、カレン、クロノ、フェイトのみ…。
「……ここか ? 」
王の間の扉と思われる、少し大きな扉の前に差し掛かったアル達。
「多分、この先に奴が…。」 「行こう、アル!」
「……開けるぞ。」
アルはそう言い、ゆっくりと扉を開ける。リバルとヘレンは、固唾を呑んで待つ。
扉は開き、ゆっくりと王の間へ入っていくアル達。
「……やぁ、随分と遅い到着だねアル。」
「そのまんま俺と同じ姿だな。」
「それは初代の影もそうだったろ ? 」
闇の書事件で倒したシャドーは、アルと姿形同じであった。それは影の独特の特徴である。
「もぅ余り時間がない、そろそろ決着を付けようアル。」
「待て、お前の目的はなんだ…」
するとシャドーは険しい表情でアルを見つめ、そしてその顔付きは笑顔に変わると。
「……まぁいいや、殺す前に教えてあげるよ。これ、分かるかい ? ロストロギア「バレン」。何もかも作り出すことが出来る。」
「どうやってそれを手に入れた!? 」
アルが怒鳴りながら尋ねると、シャドーは大いに笑いながらこう言った。
「ふはははは、そんなの簡単だ。ヒカリだよ、あの娘が俺に渡してくれたんだよ。ま、洗脳してからの話だがな…ははははは!」
「ちッ!(封印していたロストロギアを解除してこのように使うとは…)」
「これのお陰で、僕は仲間に再び会う事が出来た!」
すると、近くにもう一つの扉から一人の男が入ってくる。
「なッ!? 馬鹿な…そうな…。」 「どうして…… ? 」 「……ぁぁ…ぅ……。」
「……久しぶりだな、アル。」
そこにはアル自身の手で殺した、バンプ・クライアントの姿があった。
「「バレン」の力によって、あんたの命を再製して蘇らしたのか…。」
「その通り、「バレン」はただこいつを蘇らせる為の土台に過ぎない。それにこいつだけじゃない。テイク・クライアントも居るな…。」
「ゲヘナを飢饉で大変な事にしようとした悪人…。」
リバルが険しい表情で俯く。
「あの飢饉で多くの人達が死んじゃって…。」
ヘレンも悲しそうな顔で俯いてしまう。
「ま、こんな物(「バレン」)もう要らないんだけどね…。俺が欲しかったのは……これだ!」
「バレン」をアルに投げ渡すと、懐から水色の丸い宝玉を取り出す。
「……それはなんだ ? 」
「まぁ、待てよ。これを使って、俺は魔界と聖界をひとつにするという計画さ…。」
「魔界と…」 「聖界を…」 「ひとつにするだと ? 」
シャドーが言っている事が全く理解出来なく、首を傾げるアル達。
「聖界とは、今の管理局の連中が監視、管理している世界の事だ。ここゲヘナは、魔界を意味する。当然、魔界はここの世界しかありえないがな…。」
「元々、世界は一つだったのだ!しかし、気づいたら世界はバラバラになっていた。俺はその乱れた世界達を一つにし、今まで成し遂げなかった事を成し遂げるのだ!!」
その話を聞いてアルは表情を変える。