▼第十四章 中編
しかし、カレンは知っていた。その馬鹿げた力を持ってこの状況を覆せる男を。
「さぁ、今から神様がやって来るぜ…」
「何を馬鹿な事を、ついに正気が失せたか ? 」
呆れ顔で両手を振る。すると…
「ヒャッハアァァァァァァ!プレス・クロニクル!!」
すると、外から巨大な蒼い拳が振り下ろされる。その巨大な拳はシャドーを直撃し、水色の宝玉は宙に舞う。
「ぶおぉぉぉう!? グアァァァ!」
プレス・クロニクルを喰らい、壁へ吹き飛ばされるシャドー。
「サイコ!」
「カレン、大丈夫か ? 」
天井の穴から見える男。サイコ・フィーリングであった。
「あぁ!俺の大事な玉が…何処だ…何処だ ? 」
急に依然の威勢は失せ、必死になって探す。
「此処にあるぜぇ。」
シャドーが慌てて見上げると、そこには水色の宝玉を持ったワタルの姿が。
「…貴様……俺の、俺の大事な玉をぉぉぉぉぉぉ!!」
シャドーは激怒し、肩のアームでワタルを掴み横へ振り回して投げ飛ばす。
「い、いてて……随分と乱暴な事をしてくれるな。」
すると、ワタルに念話が送られる。
「…………。(ワタルさん!あれはグレンモアと言ってバンプ・クライアントの超圧縮リンカーコアです。)」
「……よっこらせ……。(何だ、超圧縮リンカーコア ? それがどうしたんだ ? )」
念話を聞きながら立ち上がるワタル。砂煙が炊き篭る。
「…………。(簡単に言えば、あれが暴走したら奴が言っていた感じで、次元震が起きちゃうんです。だから他の世界にも影響が出ちゃうのでなんとかしないと…)」
「(なるほど、丁寧な説明ありがとう。だけどな、この戦いは負けられねぇ…だから俺は諦めない!)」
カレンの説明を受けても、常に強気なワタル。すると、サイコが念話の回線に入ってきた。
「……コホン…。(なら、皆さんは目を瞑っててくださいね♪)」
「「(サイコ!? ま、まさか…)」」
「……フヘヘ…(ええ、そのまさかです♪)」
念話が切れるとワタルとカレンは、サイコを見つめた。するとサイコは微笑みながら手を振った。
「カレン、どうかしたのか ? 」
クロノが不思議そうに聞く。それに対してカレンは、耳元で説明した。
「なんとも馬鹿げた事を…」
眼を丸くしてカレンを叩くように言う。
「だ、だから気をつけてね…」
「あぁ、それはさすがに困るからね。」
二人で少し怯えながら話す一方、シャドーは。
「はぁ……危なかった…貴様ら、最後まで邪魔をしやがって…」
「うるせぇー!」
上からサイコのふざけた声が聞こえる。
「貴様…よくもやってくれたな。」
シャドーが怒りをあらわにする。
「だからうるせーって!」
さらにふざけた声で怒鳴るサイコ。
「なッ!調子こいた野郎だ…ロード・オブ・ブレイカアァァァァ!!」
「皆さん!!」
サイコが叫ぶと皆眼を瞑った。
「ライト・オブ・ジェネシス!!」
ゲヘナ城門
「ついに着いたな。」
はやてが見上げるように呟く。
「皆で行けば荒くなるかもしれないが、すぐに王の間に着くだろう。」
シグナムも同様見上げながら呟いた。
「まぁ、数が多いだけだ。なんとか…ッ!? 」
突然魔力反応を感じたアル。回りを見渡す。すると皆も気づいたのか辺りを見渡す。
「そこまでだアル!」
すると上空からテイク・クライアントが舞い降りる。
「生きていたとは予想外だったよ。それに、夜天の王。」
アルを見つめると横目ではやてを睨みつける。
「よくも、あたいの大事な家族に怪我させてくれたな!」
はやてが怒鳴り上げる。
「アル君、あんたらは先に行ってや。こいつはあいたらが決着を付ける。」
「はやてちゃん…」
「なのはちゃんは、フェイトちゃんと合流してシャドーを叩くんや!」
なのはが心配そうに近寄りと、少し低い声で指示した。
「うん…気をつけてね。」
「当たり前や、うちらが負けるないやんか!」
「なのは、心配すんな。あたいらが居るんだからよ!」
ヴィータがニコっと微笑みながらなのはの背中を軽く叩く。
「はやて、気をつけろよ。」
アルが鋭い目線でそう言うと皆を連れ、ゲヘナ城へ入って行った。
「行かせへんよ!」
「我ら守護騎士が…」 「一歩足りともな!」
「ふふふ、愚かなだな。夜天の王がこんなガキとは…ベルカの騎士も落ちたものだ!」
テイク・クライアントは、腰からエクスキューショナーを抜き、はやてに斬りかかる。
「なッ!? 」
「その程度か ? 」
シュベルトクロイツで余裕の表情で受け止めるはやて。
「(感じる、感じるで、三大騎士の熱き思いが…絶対にその熱き想い、忘れへんで。)」
「はあああぁぁぁ!(ノワール、力を!)」
シグナムが大きく飛び上がり、テイク・クライアントを斬りかかる。
「ちぃ!」
テイク・クライアントは、素早く横に転がるように移動し回避する。
「アイゼン!おらああぁぁぁ!」
さらに、ヴィータの鉄槌がテイク・クライアントを襲う。
「ええい、雑魚が!」
鋭い爪をした老王の腕で、ヴィータのグラーフアイゼンを受け止める。