▼第十一章 後編
「うふふ、お二人共そう固くならないで。私達は、個人的にも友人だから。いつも通りで平気ですよ。」
「と、騎士カリムが仰せだ。普段と同じで…」 「平気や♪」
それを聞いて、アルとフェイトは席に座る。
「じゃあ、クロノ君久しぶり♪」
「お兄ちゃん、元気だった?」
「ぶはぁ!」
「ッ、それは止せ。お互い、もう良い歳だぞ!」
と、少し照れを隠しながら必死に話すクロノ。
「兄弟関係に年齢は関係ないよ、クロノ♪」
「「んふふふ。」」 「ぅ、ぅっん!」
アル一人、苦笑していたが。はやてが喉を軽く鳴らす。
「んっふん。さて、昨日の動きについてのまとめや、改めて機動六課設立の裏表について、それから今後の話や。」
すると、窓に設置されたカーテンが窓を覆い、灯りが消される。
そして、魔法のモニターが映し出される。
「六課設立の表向きの理由は、ロストロギア「レリック」の対策と独立性の高い小数部隊の実験例。知っての通り、六課の後継人は僕と騎士カリム。それから僕とフェイトの母親で上官、リンディ・ハラオウンだ。それに非公式ではあるが、下の三提督も設立を認め、協力の約束をしてくれている。そして、アルが六課に所属しているという理由もあるが、現魔界最高責任者ヒカリ・グラリティも協力を約束してくれている。」
魔法のモニターが消されると、カリムが席を外しなのは達の前に立つ。
「その理由は、私の能力と関係があります。」
すると、十字に結ばれた札束のような物を取り出し、それを解き始める。
「私の能力、プロフェーティン・シュリフテン。」
すると、札束が金色に光り、カリムの身体の周りに浮くように一枚一枚並べられていく。
「これは最短で半年、最長で数年先の未来、それを詩文形式で書き出した預言書の作成を行う事が出来ます。二つの月の魔力が上手く揃わないと発動出来ませんから、ページの作成は年に一度しか出来ません。」
すると、カリムの周りに並べられていた札、三枚が一枚ずつなのは、フェイト、アルの元に送られる。
「予言の中身も、古代ベルカ語で解釈によって意味が変わることもある難解な文章。」
フェイトが二人に読めるかどうか、顔を向けるが二人とも首を横に振り、札はカリムの元に戻された。
「世界に起こる事件をランダムに書き出すだけ、解釈ミスも含めれば的中率や実用性を考えれば、割とよく当たる占い程度。つまりは、あまり便利な能力ではないんですが…」
「聖王教会はもちろん。次元航行部隊のトップもこの予言には眼を通す。信用するかは別にして、有識者による予想情報の一つとしてな。」
「因みに、地上部隊はこの予言がお嫌いや。実質のトップがこの手のレアスキルとかお嫌いやからなぁ。」
と、少々呆れ顔で話すはやて。
「レジアス・ゲイズ中将…だね。」
「そんな騎士カリムの予言能力に、数年前から少しずつある事件が書き出されている。」
そう言うと、クロノはカリムに眼で合図を送ると、カリムが一枚の札を眼の前に浮かべた。
「古い結晶と無限の欲望が集い交わる地。死せる王の下、聖地より彼の翼が甦る。死者達は踊り、分かつ大地の法の塔は虚しく焼け落ち。それを先駆けに数多の海を守る法の船も砕け落ちる。」
「ッ、それって…」 「まさか!?」
「……おいおい。」
それを聞いた三人は、驚いた。
もし自分達の予想が正しければと思い…
「ロストロギアをきっかけに始まる、管理局地上本部の壊滅と…そして、管理局システムの崩壊。」
「んな馬鹿な…管理体制が万全な地上本部が……」
ただ三人は、その予言に呆然とするしか出来なかった。
そして、軽い今後の話もして四人は機動六課へと戻っていった。
既に夜遅かった。四人は、私室に戻って休む事に…