▼第十四章
「魔法少女リリカルなのはStrikerS アル=ヴァン編」第十四章「その日、機動六課(前編)」
─────9月11日 機動六課隊舎 PM19:14──
時空管理局地上本部公開意見陣述会が前日となった夜。
フォワード陣と隊長陣がはやての指示で集められた。
「という訳で、明日はいよいよ公開意見陣述会や。明日14時からの開館に備えて、現場の警備はもう始まってる。なのは隊長と、ヴィータ副隊長、アル=ヴァン教導官とヘレン副隊長、リィン曹長とフォワード四名はこれから出発。ナイトシフトで警備開始。」
「皆、ちゃんと仮眠取った?」
「「「はい!」」」
「私とフェイト隊長、シグナム副隊長とリバル副隊長は明日の早朝に中央入りする。それまでの間、よろしくな!」
「「「はい!」」」
そして、今晩出発のなのはとアル達はヘリに乗る為、ヘリポートへと移動した。
はやて達も見送りに同行している。
─────機動六課 ヘリポート──
「ヘレン、分かっているな?」
アルとヘレンが並んで歩きながら、腕を組んで話しかける。
「ええ、分かっていますよ。ご心配なく!」
「……なら良い。」
そして、アルとヘレンがヘリに搭乗し、なのはが搭乗しようとした時、ふと後ろを振り向く。
すると、アイナに前に立つヴィヴィオの姿が…
「ッ、あれヴィヴィオ?どうしたの、此処は危ないよ?」
「ごめんなさい、なのは隊長。どうしてもママの見送りするんだって…」
アイナが説明する中、寂しそうな表情でなのはを見つめるヴィヴィオ。
「んー、駄目だよヴィヴィオ。アイナさんにわがまま言っちゃ。」
そう言い、ヴィヴィオの鼻を軽く摘んで注意するなのは。
「……ごめんなさい。」
暗く、寂しそうな表情ょをしながら謝るヴィヴィオ。
すると、後ろからフェイトとはやて、シグナムが歩み寄る。
「なのは、夜勤でお出かけは初めてだから、不安なんだよきっと。」
「ああそっか、なのはママ今夜は外でお泊りだけど、明日の夜にはちゃんと帰ってくるから。」
「……絶対?」
涙ぐみながらも、必死になのはに確認するヴィヴィオ。
「絶対にぜったい♪良い子で待ってたら、ヴィヴィオの好きなキャラメルミルク作ってあげるから。」
と、ヴィヴィオに小指を差し出して、約束を交わそうとする。
「……うん。」
そして、頷いてなのはの小指と自分の小指を交わらして約束したヴィヴィオ。
「ママと約束ね?」 「うん。」
その後、なのは、フォワード陣はアル達が既に乗っているヘリに搭乗し、地上本部に向ってヘリを飛ばした。
「さ、戻ろうヴィヴィオ。」 「うん!」
フェイトと手を繋いでアイナと共に隊舎に戻っていった。
「私達も9時間後は出動や、仕事片付けて早めに休んどこ!リバルちゃんもは早く寝た方がええよ?」
「はい、私から後退部隊に指示を出しときます。」 「ぁ、はい。」
「うん、お願いや♪」
─────中央管理局 地上本部 AM02:35──
現場に到着したアルは、なのは達と別れ警備をする為に内部へ歩いていった。
「………やはり、警備は凄いな。」
「そうですね、これぐらい警備していれば…」
中に進みながら、ヘレンと共に念話に会話する。
「どうした、緊張してきたか?」
「いえ、大丈夫です。」
外では、ヴィータとフォワード陣が警備をしており、はやて達が来るまではなのはが内部を警備している。
その中でも、一番奥までアルとヘレンは警備していた。
テレビ中継される中、ついに朝を迎えた。
既にはやて達が到着し、シグナムとリバル、フェイトと共に警備に当たっている。
そして、ついに公開意見陣述会が始まった。
「始まったな、そっちはどうだ?」
「うん、なのはと警備しているけど大丈夫だよ。そっちはどう?」
「こっちはヘレンと警備しているが、至って問題無し………なぁ少し聞いて良いか?」
ヘレンと警備して歩きながら念話をするアル。
「ん、何?」
「カリムの予言、内部のクーデターだがそれは極めて低いのだろう?なら、外部。あのスカリエッティという連中のテロ、だが何故此処にテロを?理由が分からん。」
「ん、兵器開発者なら威力証明?でも、リスクが高いよね…」
兵器の威力証明なら何処でも出来る。
わざわざ、地上本部、それに警備が厳重な時に威力証明と言っても意味がない。
アルの頭の中には、奴らは他の何かの目的があるのだろうと思っている。
それは、アルたけでは無かった。はやてやなのは達もそうだ。
「ともあれ、目的が分からなくても私達は指示通りやっていけば良いと思うよ。アルもあまり無理は駄目だよ?」
「ああ、分かっている。ちゃんとヘレンも居てくれてる。じゃあ、また後で。」
その後、警備は続いて日が暮れ始めた。
公開意見陣述会が開始されてから役四時間、未だに騒動やテロは起きていない。
だか、襲撃は突然起きた。
「ッ、何だ?」
建物全体が揺れた感じが身体を通じて分かった。
アルは、少し離れた場所で歩いているヘレンの元に走った。
「ヘレン!」
後ろから走り、ヘレンの肩に手を掛けて話しかける。
「すみません、アルさん。私行かないと!」
「ぇ、お、おい!」
ヘレンはそう言うと、突然アル手を振り払い走り出した。
アルが手で追うが、老王「神速」を持つヘレンは一瞬にして姿を消した。
辺りを見渡すが、局員達が混乱している者、移動ルートを確保しようと必死で道を開けようとする者が居る。
「(念話が通じない、AMFも濃い。誰かに合流したいが、今はヘレンだ。あいつ、一体どうしたんだ?)チッ、老王!」
あまりのめんどくささに舌打ちをするアル。
そして、老王をビースト化させて鎧化させる。
すると、窓に向って歩いて左手を強く握り締める。
強く握り締められた拳は、窓に殴り掛かってガラス張りの窓は破壊される。
「まずは、地上に降りよう。」
そう言い、眼を紅く染め黒き二枚の翼を生やして下に飛び降りた。
あまり魔法が使えない今、この方法が適切だ。
地上にゆっくり降り立ったアルは、翼を体内に戻し紅く染まった眼は黒く戻る。
「(スカリエッティ一味が居るのなら、魔法が使える場所は………ッ、地下か!)」
自分が向うべき場所が分かったアルは、風に逆らいながら全力疾走する。
アルが知っている中、地下と言えば地下駐車場。
そして、緊急防壁の元が設置されている地下階段で行く方法の二つしか知らない。
考えた結果、地下駐車場に行く意味は無いと考え階段で行く方を選択した。
内部に入るが、局員達が走り回っている。
その中、地下へと通じる階段を探すアル。
知っているつもりだが、記憶があやふやである。
「(もし地下に誰も居なければ、既に敵は内部に?だが、内部に入れる者なんか…)」
様々な思考が入り混じる中、ふとアルはある事を思いつく。
「老王、もう一人のお前の居場所、教えてくれ。老王の名は、「神速」!」
すると、左腕の老王「滅壊」が紅く光る。
アルの頭の中に居場所がビジョンとなって映し出される。
「地下避難通路?東ホールの……ロンダリングホール…」
映し出されたビジョンは、ヘレンは映し出されずヘレンが居ると思われる場所の映像だった。
その映像を見て、場所を推測したアルは左に方向転換して走り出した。
行きかたは様々あるが、エレベータの方が早いと判断したアルはエレベータ乗り場前に到着する。
「ッ、やはりな。」
案の定、エレベータは止まっている。
しかし、扉は開いている。
「ちぃと足が応えるな……仕方ない!」
するとアルは、そのまま身をとおじて飛び降りた。
先ほど、窓から飛び降りた高さに比べれば低い。
すぐに着地するが、足への衝撃がアルを襲う。
「ちゃんと飛んで降りればよかった……」
痛みを堪えながら、地下避難通路に到着した。
そして、東ホールのロンダリングホールへ向って再び走り出す。
「もうすぐで着く、エクスキューショナー!」
「了解。」
アルは、鞘からエクスキューショナーを抜き、騎士甲冑を身に纏う。
そして、再び瞳を紅く染めてアグトレットの姿になり低空飛行で東ホールへと急ぐ。
低空飛行で移動していると、遠くに天井に吊るされて掲げられている東ホールと書かれた看板を発見する。
「……此処か。」
静かに床に降り立つ。
「確か、此処のはずだが……ヘレン、居るのか!?」
ヘレンの名を呼ぶ。だが、返事はない。
ゆっくりと前を歩き、辺りを警戒して首を左右に振る。
すると、後ろから突然拍手の音が聞こえ始めた。
「ッ!?」
少し驚いて振り向くアル。
すると、一人の男が拍手していた。
「いやはや、随分と凄い進化を遂げたようだな、我戦友よ。」
その男は、何やらアルの事を知っているのか様に話す。
「………ッ!ぉ、お前!?」
アルは、眼を丸くして自分の眼を疑った。
だが、すぐに冷静さを取り戻し微笑をする。
「ふ、もしかしてまた地獄が満員だった。とか言うんじゃないんだろうな?」
「なぁ、ケロベロス。」
「ん、ふふふふふ。さぁ、どうでしょうアル。」
ケロベロス、アルの古きライバル的な存在の戦友。
魔界では、悪魔の味方になりアルに襲い掛かり、「A,B事件」では死んだはずなのに亡霊として蘇った男。
「もうあなたに話す事は何もありません。さぁ始めましょう!」
「くッ!」
ケロベロスの言葉にふと、エクスキューショナーを構えるアル。
そして、ケロベロスは腕に納刀していた愛武器のコンバットナイフを抜いてこう呟いた。
「IS発動、ナイクルマース!」
次回予告
スバル「守りたかったもの、守らなくてはいけなかったもの。」
キャロ「壊されていくもの、消えてしまうもの。」
キャロ「次回魔法少女リリカルなのはStrikerS 第十五章」
スバル「その日、機動六課(後編)」
「「Take off!」」