▼第十五章 
魔法少女リリカルなのはStrikerS アル=ヴァン編」

第十五章「その日、機動六課(後編)」


─────地下避難通路 東ホール ロンダリングホール──


薄暗い空間で、金属がぶつかり合う音が辺りに響き渡る。

「てめぇ、今度は戦闘機人か!スカリエッティの目的は何だ!」

剣を交わらせ、お互い離れあって疑問を問う。

「言ったはずだ、もうあんたとは話す事は何もないと…」

アルには分からなかった。

彼がどうして、戦闘機人、スカリエッティの手先になったのか…

いくら敵同士とは言え、少し昔までは戦友同士。

アルは、心の中で少し戸惑っていた。

「剣を交えるのは、10年ぶりか!?」

浮刀術のよって、ナイフは長剣に構築されアルに斬りかかる。

アルも迎え撃つ為、床を力強く蹴る。

そして、アルはケロベロスの問いに応えない。

無言で力強く魔剣を押し付ける。

「ふ、だんまりか。」

すると、ふとアルが口を開く。

「おい、ヘレンは何処だ?」

それを聞いたケロベロスは、ふと驚いた表情をするがそれは一瞬にして消え、笑顔へと変わる。

「我娘?ふふふ、さぁな!」

そう応えると、アルを弾き飛ばして距離を取る。

「ならば、無理やり聞き出すだけだぁ!」

後ろに下がったケロベロスに向った収束砲を放とうとする。

そして、ケロベロスに向って収束砲が放たれる。

だが、ケロベロスは残像を残しながら横へ滑るように回避した。

それに、ケロベロスが作った残像が収束砲にのまれると、壁へと吹き飛ばされていた。

「質量のある残像か…」

彼と再会した直後、ふと発した言葉。

「IS発動、ナイクルマース!」

質量の残像を作り出すなど、今までの彼には不可能だった。

よって、アルはこれがIS能力だと確信した。

収束砲を放ったせいで、左腕全体が少し熱い。

だが、そんな事は気にせず、魔剣を両手で握り締めて横を走っているケロベロスを追う。

「───、ふぅ!」

追われているケロベロスは、後ろに居るアルに向って方向転換をし、後ろにバックステップしながら回りに浮いている小型ナイフを無数、アルに向って放つ。

迫り来るナイフをアルは、エクスキューショナーを薙ぎ払って小型ナイフを叩き落とす。

だが、それだけで全てが叩き落せる程の数ではない。

一度叩き落とすが、その後もナイフはアルに迫り身体を切り裂いていく。

「ゥぐぅ!」

肩、右腕、足腰を切り裂かれ、紅い血が飛び散る。

痛みに耐えながらも、アルは大きく飛び上がりケロベロスの前方に飛び降りる。

「何ぃ!?」

そして、エクスキューショナーを横切りをするように大きく斬りかかる。

「はあぁぁぁぁあ!」

だが、ケロベロスは小型ナイフを終結させ少し自分と同じ大きさの壁を作り上げる。

エクスキューショナーは、ケロベロスの身体を切り裂く事は無く、鉄の壁を切る。

アルは諦めず、魔剣を右手に持ち、左腕の老王を鎧化させてそれを殴って粉砕した。

「老王を上手く使いこなしているようだな。」

「っそい!」 「ッ!」

鉄の壁は砕かれ、後ろに下がりながら話す。

だが、既にアルは背後に居りエクスキューショナーを振り下ろそうとしていた。

さすがに防御する事は出来ず、右腕前に出して防御するが見事に斬りおとされる。

「(こいつ、どうしてこんなに動ける?奴は装甲を厚くする事で機動性はないはず………)」

腕を斬りおとさせ、左手で必死に右腕を抑えている。

身体中がとても熱く感じる。辺りには紅い血が床に大量に落ちている。

これは何を意味しているのか?

ケロベロスは、死闘を楽しんで熱いのか、生死の境に居て身体が熱いのか分からなかった。

そして、頭で斬られた事を考えて周りをみると…

「なッ!?」

すると、エクスキューショナーを自分に向けて掲げてるアルが無数と自分を囲んでいた。

「ば…馬鹿なぁ!(こいつ、幻術を使えたのか!)」

幻術とは言え、どれが本物なのか分からない。

心臓が高速で胸を打つ。

必死に右腕を押さえてるが、血は相変わらず収まらない。

「残念だったな、伊達に此処十年で砲撃一筋のガキは、卒業したよ。」

エクスキューショナーを納刀し、腕を組んで一人のアルが向って歩いてくる。

アルは、勝利を確信した。

──これなら勝てる。確実に奴をしとめられる、今度こそ!─

そんな事がアルの脳裏によぎった。

そして、身動きが取れないケロベロスに向って左腕を後ろに引く。

「ロード・オブ……」

アルは慢心の笑みで、収束砲を放とうとする。

そして……

「ブレイカアァァァァアア!!」


──勝った…─


だが、アルの思い通りにはならなかった。

「ッ!」

収束砲が出ない。

先ほどまで、魔力は確実に老王に送り込まれていた。

だが、収束砲は放たれなかった。

「…………(ふ、不発!?)」

思いもしていなかった事に呆然として佇む。

そして、幻術も消えてしまう。

「ッふ!」

ケロベロスは、この一瞬に全てを掛けた。

右腕を押さえいてた左手は、ナイフを持ちアルに向って走り出す。

アルに向かいながら、一瞬にしてコンバットナイフは大剣へと姿を変える。

アルの頭の中は、真っ白だった。

今まで、こんな事は無かった。

老王が自分に応えてくれなかった。

そう、アルは考えてしまった。

そして、ケロベロスは大剣をアルの腹に力強く差し込んだ。

「ッ、ぬふはぁ……」

ケロベロスは、すぐさま大剣をアルの腹から抜き、後ろに大きく下がる。

「セイン……まずい、頼む。」

ケロベロスは、大剣を元の姿へと戻して納刀し、セインに連絡を取った。

眼の映りが悪い。意識も薄くなってきていた。

「ケ、ケロ兄!ま、待ってろよ!」

セインは慌てて、ケロベロスの真後ろに登場し、ケロベロスを抱きかかえてその場から消えた。

そして、アルは腹から大量の血が流れていた。

腹を両手で抑えて、一歩ずつ前に進む。

アルも同様、意識が薄れてきた。

「ま、負けた……」

アルは、小声でそう言いヘレンを探した。

「ヘレン…ヘレン……」

少し大きな声で叫ぶが、少しずつ小さくなっていく…

すると、遠くの方に何かを見つけた。

そこには、ボロボロの姿になったヘレンの姿だった。

彼女の周りは血があふれていた。

アルは、眼を丸くしながらも腹の激痛に耐えながら一歩ずつヘレンに近づく。

そして、彼女の前に立って見下ろす。

無数の小型ナイフが彼女の身体に突き刺さっていた。

「はぁ…ぁぁ…はぁぁぁ……わあああぁぁぁぁぁああぁああああぁ!」

地下避難通路 東ホール ロンダリングホールには、一人の男の嘆きの叫びが響いていた。


─────ミッドチルダ 中央区 上空 ──


「気功、先鋭弾!」

ミッドクチルダ上空では、戦闘機人のクイント・ナカジマとリバルが戦闘していた。

リバルが放つ、気功と魔力が融合した魔法弾を放つ。

だがクイントは、防御魔法を張って軽がると防御する。

「クイント・ナカジマ!レキはどうした!?」

「……あぁ、彼ならもう…」

腕を組んで、微笑みながらリバルを見下ろしながら話す。

その笑顔は、正義ではなく悪意に満たされた表情だった。

「(レキはやられたか?六課に戻ってグリフィスやシャマルを助けないと……)」

「貴様、何故…何故殺されたスカリエッティの……」

リバルには分からなかった。

クイント・ナカジマは、戦闘機人によって殺害されたはずなのに、何故此処にいるのか。

何故、スカリエッティの協力をするのか。

深く考えても、答えは出なかった。

「あなたが、それを知る必要はありません。」

「黙れ!貴様にそんな決定権はない!」

「ふぅ、もうあなたと戦う理由はないようです。」

すると、辺りに小さな粒子が無数と現れる。

「ッ!」

そして、無数の粒子は強烈な光を発して辺りが真っ白となる。

光が晴れると、クイントの姿は無かった…

「……クッ、逃がしたか。ッ六課は!」

逃げられた事に悔しがるが、今はそれどころではない。

リバルに焦りが生まれる。

そして、リバルは急いで六課へと戻って行った。


─────地下避難通路 東ホール ロンダリングホール──


その頃、アルは冷静さを取り戻し、地上部隊に救援を呼んで待っていた。

そして、魔法のモニターを開くとスカリエッティの映像が映し出される。

「ミットチルダ地上の管理局員の諸君、気に入ってくれたかい?ささやかながら、こちらからのプレゼントだ。治安維持だの、ロストロギア規制などと言った名目の元に圧迫され、正しい正しい技術の進化を促進したのにも関わらず、罪に問われたきだいの技術者達。今日のプレゼントはその恨みの一撃だと思ってくれたまえ!しかし私もまた人間を命を愛する者だ。無駄な血は流したくないよう努力はしたよ。可能な限り人道的に…いむべき敵を一方的に制圧する事が出来る技術。それは十分に証明出来たと思う。今日は此処までにしておこうと思う。この素晴らしき力と技術が必要ならば、いつでも私宛に依頼をくれたまえ。格別の条件でお譲りする…ふふふふ、あははははは、はーああはははは!」

それを見たアルは、力強く拳握り絞めた。

「ふ、ふざけやがって……終わってたまるか…まだ、まだ俺らは終わってない!」




次回予告

アル「壊されてしまった、地上本部と機動六課。」

リバル「だけど、倒れてままではいられない!」

アル「立ち上がるんだ、皆でもう一度!」

リバル「次回、魔法少女リリカルなのはStrikerS 第十六章」

アル「翼、ふたたび」

「「Take off!」」
スポンサード リンク