▼第十七章
「魔法少女リリカルなのはStrikerS アル=ヴァン編」
第十七章「ゆりかご」
─────聖王医療院──
アルは一人、聖王医療院に訪れていた。
目的はもちろん、魔界アルデバラン首都ゲヘナ魔王親衛隊副隊長のヘレンを一目、見る為である。
地上本部襲撃事件の時は、ケロベロスの戦闘もありヘレンは重体。
リバルと一度見舞いに行ったが、心配で仕方なかった…
廊下を少し歩くと、リバルから教えてもらったヘレンの病室の前に着く。
アルは、扉の前で立ち止まり、軽くため息をしてから扉をゆっくり開けた。
「……………」
病室は、窓が付いた個室。
ベットとテーブル、パイプ椅子が床に並べられている。
椅子には座らず、そのままベットへと近づく。
すると、首から下は包帯を巻かれて今も眠っているヘレンの姿があった。
テーブルには、待機状態のグラディウスが置かれていた。
修理はシャーリーが予め、いつでも復帰出来る為に修理して貰っていた。
ヘレンの顔を見つめているアルは、彼女の顔を見つめていると少しずつ悔しさが込み上げてきた。
王を守る副隊長でも、王が守ってやらないといけない場合もある。
だが、自分にはそれが出来なかった…
気付いたら、涙が頬を通って流れていた。
アルは慌てて、右手で涙を拭き取る。
「ヘレン、俺はお前の親父を……再び殺しに行くよ。あの時(A,B事件)も俺は奴を仕留められなかった。だけど、お前は良いのか?俺は、今さらだがお前の親父を殺す事をためらってる……どうすれば良いのかな?」
そうヘレンに問うが、ヘレンから応答はない。
今だ、生死の中を彷徨っている…
「この前、聞いたようにお前は奴が死ぬ事に対して平気だと、言っていたが俺は、それでもためらってる。いや、ごめんな。こんな時に……大丈夫、やる事はしっかりやってくる。しっかり…と。」
再び、涙が溢れてきた。
彼女への思いは強かった。
家族として。宿敵の娘として。これから殺しあう相手の娘として。
アルは、彼女への思いは強かった。
「さっさと目を覚まして、空にあがってこい。フェイト隊長が待ってるぞ。」
そう言い、アルは病室を後にした。
アルは、早歩きで医療院を後にした。
耐えられない思いと、はやてやなのはの為にも早く戻る為である。
ヘレンが居ない、親衛隊の残りはリバルだけとなった…
─────時空管理局 次元航行部隊 L級巡航船「アースラ」──
ミーティングルームに、なのは達が椅子に座って待機している。
すると、扉が開いてはやてとグリフィスが入ってくる。
「うん、皆お揃いやな。」
「失礼します。」
「丁度良かった。今、機動六課の方針が決まったところや。」
ゆっくりと椅子に座り、皆に報告するはやて。
「地上本部による、事件への対策は残念ながら相変わらず後手に回ってます。地上本部だけでの事件調査の継続を強行に主張し、本局の介入を固く拒んでいます。よって、本局からの戦力投入はまだ行われません。同様に本局所属である機動六課にも捜査状況は公開されません。」
「そなけどな、私達が追うのはテロ事件でもその主犯格のジェイル・スカリエッティでもない。ロストロギア「レリック」。その捜査線上にスカリエッティとその一味がおるだけ。そういう方向や。で、その過程
おいて誘拐されたギンガ・ナカジマ陸曹となのは隊長とフェイト隊長の保護児童、ヴィヴィオを捜索、救出する。そういう線で動いていく。両隊長、意見あれば…」
「理想の状況だけど、また無茶してない?」 「大丈夫?」
「後継人の皆さんの黙認と協力はちゃんと固めてあるよ。大丈夫、何よりこんな時の為の機動六課や、此処で動くかな部隊を起こした意味もない。」
「了解」 「なら、方針に異存はありません。」
「おし、ほんなら捜査出動は本日中やから、万全の体制で出動命令を待っててな。」
「「「はい!」」」
そして、はやてはグリフィスと共にミーティングルームを後にした。
それに続いてフォワード陣やフエイトも。
そして、なのはとティアナが残っていた。
「スバルはまだ…」
「は、はい。本局のほうに…でも午後にはこっちに合流出来るそうです。」
─────アースラ 艦長室──
アラートが鳴り響く艦内を歩き、ゆっくりと艦長室に入るアル。
「はやて。」
「ぁ、アル君。もう、ヘレンちゃんの方はええの?」
「ああ。それより、これは何だ?」
すると、はやては両手で口の辺りを多い小さなモニターを展開させた。
すると、そこにはアインヘリアルと戦闘機人が映し出されていた。
アインヘリアルとは、レジアス・ゲイズと管理局最高評議会が進めている計画で建造された地上防衛用の巨大魔力攻撃兵器である。
魔力による対空砲撃が可能な遠距離用魔力砲を三連装化している。
だが、それも戦闘機人によって破壊されてしまったようである。
「アインヘリアル一号機、二号機、戦闘機人達、撤収が始まってます。」
シャーリーがパネルを叩きながら、大きなモニターを展開して状況報告をする。
戦闘機人の目的はアインヘリアルの破壊。
既に完了済みのため、撤収が始まっていた。
「前回より、動きが速い…」 「……………」
大きなモニターを見ながら呟くグリフィス。
そして、それを腕を組んで黙って見つめるアル。
「早めに叩かんと取り返しがつかん事になるけど、嫌な感じに拡散してる。隊長達の投入はしずらいな…」
すると、シャーリーのパネルの一部が白く光る。
それを押すと、ヴェロッサの顔が映し出される。
「ぁ、アコース査察官から直通連絡!」
「はやて、こちらヴェロッサ。スカリエッティのアジトを発見した。シャッハが今、迎撃に来たガジェットを叩き潰してる。教会騎士団から戦力を呼び寄せてる。そっちからも、制圧戦力を送れるかい?」
スカリエッティのアジト。
予想もしてなかった事がヴェロッサから報告された。
とても嬉しい事でもあるが、同時にシャッハがガジェットに囲まれているという事態。
喜びたいが、そこまで喜べる余裕がなかった。
「うん、もちろんやけど…」 「戦闘機人、アインヘリアルから撤収。地上本部に向ってます。ッ!?あの騎士も別ルートで本部に!」
そこに映し出されたのは、ゼストだった。
フルドライブとは言え、一撃でユニゾンしていたヴィータを落とした者。
レキが前に所属していた隊長。その実力はかなりのものだ。
「廃棄都市から別反応。エネルギー反応膨大。これは…戦闘機人!?こちらも地上本部に向ってます!映像が今……」
映し出されたのは、廃棄都市を走り抜けるクイントと誘拐されたギンガと戦闘機人達。
「「「ッ!?」」」
誘拐されたギンガが戦闘機人として、スカリエッティの一味と共に居るという事に皆が仰天した。
「クイント・ナカジマ……」
個室で一人でモニターを見つめるリバルが居た。
彼女は彼女に対して、特別な思いがあった。
レキとの関係をしている数少ない人物。
リバルは、クイントへ密かな闘志を燃やしていた…
すると突然、モニターに巨大な船が姿を現す。
そして、突然映像は切り替えられヴィヴィオの姿が映し出される。
「ママ…ッ!?ぁぁ…痛いょぉ!ままぁー!ぁぁぅあぁぁ!」
「さぁ!ここから夢の始まりだぁ!はーはははははぁはははあああははは!はぁーはははははは!」
「………………」
アルは、その映像を見て今何も出来ない自分の無力さに腹を立てていた…
次回予告
はやて「予言に出ていた聖地より還った船。」
フェイト「ゆりかごを得て、スカリエッティの計画はついに最終段階へ…」
はやて「次回、魔法少女リリカルなのはStrikerS 第十八章」
フェイト「無限の欲望」
「「Take off!」」