▼第二十章
「魔法少女リリカルなのはStrikerS アル=ヴァン編」第二十章「Pain to Pain」
─────ミッドチルダ廃棄都市区──
アルがケロベロスと戦闘中の時、リバルは一人の戦闘機人と対峙していた。
右手に愛武器の槍型デバイス、「グングリル」を持つリバルの先に立つのは、以前にも戦ったクイントの姿だった。
「「……………」」
お互い何も言わず、ただ相手の眼を睨みつけるだけ…
リバルはグングリルを握り直し、一方のクイントは両手のリボルバーナックルを握り直す。
そして、リバルはひし形のゲヘナ式魔法陣を展開し、クイントはベルカ式魔法陣を展開して構い合う。
「グングリル!」 「Yes, sir.Load cartridge.」
リバルがグングリルに呼びかけると、レバーが上下に動き、俳莢口から薬莢が排出される。
同じく、クイントも両腕のリボルバーナックル両方とも、カートリッジロードをする。
そして、ほとんど同時に地面を蹴り、お互い拳と槍がぶつかり合う。
デバイスの衝突によって、激しい火花を散すが、リバルはすぐ後ろに下がる。
「グングリル、2ndフォルム。」 「Yes, sir.Bunker connect.」
すると、右手に持っていたグングリルが突然、緑色の粒子と化し、彼女の両腕両足にその粒子が纏わり付く。
そして、その纏わり付いていた粒子は精製され、両腕両足を鎧化させた。
「これなら、あなたもやり易いはずです。」
「何故、わざわざそのような事を?」
クイントには分からせなかった。確かに、自分の相手が格闘が基本ならば、こっちにはシューティングアーツがある。
槍と戦うより、確実に楽だ。だが、リバルはそれを分かっている上で格闘を選んだ。
クイントの頭の中には、その疑問が頭に残り続けた…
「それは……私も格闘が得意でね!」
後ろに下がっていたリバルは、そう言うと再びクイントに迫り、殴りかかる。
だが、クイントもそれに反応して、お互いの拳がぶつかり合う。
「クうぅぅぅ…」
クイントは、必死にリバルと拳を受け止めるが、リバルは平然とした表情をする。
すると、リバルは右足の「剛足」、老王をビースト化させ、クイントを弾き飛ばす。
左足の「剛足」、老王はアルの左腕、「壊滅」の老王のような強力な力は無い。
だが、「剛足」は相手との競り合いでは負けることは無い。
全身の筋肉を一時的に強化し、相手に競り勝つ事が出来る。
弾き飛ばされたクイントは、地面に片手を着いてその場に留まる。
そして、すぐさまウイングロードを展開し、リバルに向って走り出す。
リバルは、それに応えるように黒の翼を生やし、瞳の色を紅く変え、低空飛行で迫る。
そして、リバルが先に仕掛けるが、クイントはそれを右腕でそれを流す。
「なッ!?」
「はあぁぁあぁぁぁ!」
リバルの拳を流すと、その流した右腕でリバルに殴りかかる。
リバルは、慌てて残った右手でクイントの拳を受け止める。
だが、クイントの攻撃はそれで止まらず、そらに左のストレートがリバルの右頬に直撃する。
そして、それに続いて左足の回し蹴りが襲い掛かる。
「ッ、(三連撃!?)」
リバルは、それを防ぐ術も無く瓦礫の向こうに吹き飛ばされる。
そして、クイントはローラーブーツを走らせ、リバルに迫る。
「リボルバー…シュート!」
リバルに迫りながらも、右手から衝撃弾が放たれ、瓦礫に吹き飛ばされたリバルに容赦なく攻撃を続ける。
衝撃弾は、リバルに直撃して白煙が篭る。
だが、それでもクイントはローラーブーツを走らせ、リバルに迫る。
そして、白煙の中に突入しリバルに殴りかかる。
その時、強烈な金属音が鳴り響く。
白煙が晴れると、クイントはリバルを殴ってはいなかった。
リバルの目の前に移るのは、黒のコートと黒き翼を生やした黒の大鎌を持った青年が、クイントの拳を受け止めていた。
「「ッ!?」」
「……ヘッ待たせたな。」
そして、青年はクイントの拳を弾き飛ばす。
「さぁ、ショータイムだ!」
─────ゆりかご 内部──
「はあぁあああぁぁぁ!」 「うおおぉぉぉぉお!」
そして、アルは今だケロベロスと剣を交えていた。
剣を交え、お互い離れあう。
アルが後ろに下がると、背後に黒の球体が突然現れる。
その黒の球体が突然破裂すると、無数のナイフが飛び出してくる。
アルは、球型の防御魔法で身を包む。
無数のナイフは、防御魔法に突き刺さり爆発が起きる。
爆発によって防御魔法は破られ、身体の至る所に傷で出来、出血している。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
四方八方から攻撃がくる状況。
アルは、正直勝てる自信が無くなっていた。
自分には、特殊な左腕と剣一本。
それに対して、ケロベロスは無限のナイフと戦闘機人としての驚異的な身体能力。
圧倒的に不利。
「うおおおぉぉぉぉ!」
そんな事を考えている内に、ナイフを大剣へと精製したケロベロスが迫る。
ケロベロスが大剣を大きく縦に振ると、アルは上へと飛び、それを回避する。
「スピリットブレイカー!」
それと同時に、白の魔法弾を放つ。
その魔法弾は、ケロヘケロスに向って放たれる。
ケロベロスは、それを浮刀術でナイフを精製し、その無数のナイフを集結させ、壁を作り上げてこれを防御する。
防御し、白煙がケロベロスの周りに起きるが、その中から自ら出てアルに斬りかかる。
それをアルは、エクスキューショナーで受け止めるがそのまま下に叩き落されてしまう。
「ぬあぁぁぁあぁぁ!」
床に激突し、動けなくなってしまったアルのもとにケロベロスが降り立つ。
「ここまでだ。アル。」
「くそぉ…ど、どうして…」
アルには分からなかった。
どうして、彼が再び自分の前に現れたのか。
あの時(A,B事件)、フェイトとなのはとの戦いで力尽きたはずの彼が、何故スカリエッティの一味としているのか。
操られているか、それとも自分自身の意思で此処に居るのか、それすらアルには分からなかった。
「どうして…スカリ、エッティと共に…」
「ん、何故スカリエッティと共に居るかだと?ふふ、そんな単純な事だ。お前に勝つためだ。」
「勝つため?」
「そうだ!俺は貴様に負け、一度は殺された!だが、あの時(A,B事件)に俺は再び命を授かった。だが、それでも貴様に勝利する事もなく終わった……だが、あの時(A,B事件)の敗北は、俺にとってはあまり意味の無い事だった。」
「どういう事だ!?」
アルは、ケロベロスが話していることが理解出来なかった。
そんな事を考えても、彼の話は続く。
「俺には保険があった。そう、それこそがスカリエッティという保険。俺はあの時、力尽きて動けない状態だった。だが、スカリエッティと契約していた俺は、戦闘機人に救助され一命を取り留めた。そして、俺はお前に勝利する為にこの身体を手に入れた。奴も俺を上手く利用していたつもりだが、俺にとってどうでも良いこと。俺はただお前に勝ち、そしてあの世に送る事だけを考えていた。自分の命なんかどうでも良かった……一度は死んだ身だからな。そして、俺は憎しみ、怒り、悲しみをこの身に宿し、この時を待った!そしてついに来た!勝利の時が!」
「…………くだらん。」
「何!?」
「たかが勝利の為にここまでするとは……哀れだな。」
「!俺が……哀れだと……!?」
アルは思った。
自分は多くの者から恨まれている。
だが、自分を殺す為だけに生きる彼を見て、アルは悲しかった。
これでは、ただの生物兵器じゃないか…と
「はっきり言ってやるぜ!憎しみ、怒り、そんな物を束にしたってこの俺には勝てないぜ!」
「ふん、この期に及んで遠吠えとは……哀れなのは、貴様の方だな。貴様はここで終わる!覚悟を決めるが良い!」
─────ミッドチルダ上空──
「次元航行部隊到着まで、あと45分。巨大船の軌道ポイント到達まで、あと38分。」
はやては、アースラに搭乗しているシャーリーから「ゆりかご」の軌道ポイント到着について報告を受けていた。
「7分差……」
「主砲の照準は、ミッド首都に向けられています。7分あれば…」
「撃てるやろうねぇ……防衛ライン現状維持、誰か指揮交代!今から私も突入する。」
ミッドの空は、はやてが指揮する航空魔道師隊がゆりかごを護衛するガジェツト達と戦闘中だった。
「えぇ!?」
「軌道上になんて上らせへん。地上に攻撃もさせへん!」
「八神部隊長!」 「でも……」
すると、突然魔法のモニターが展開される。
これは、通信用モニターである。
「割り込み失礼します。こちらロングアーチ3。」
「アルト?」
「八神部隊長、あともうちょっとだけ待ってください!大事なお届け物を今そちらに!」
そして、アルトの通信が切れると後ろから、はやてに迫ってくる者を見つける。
「八神部隊長!」
「ッ、ヘレン!もう身体は大丈夫なん?」
それは、灰色のコートを着たヘレンの姿だった。
「私の事は平気です。私も突入します!」
「そやけど…」
「アル=ヴァン戦技教官の事が心配なんです!」
「………分かった。そやけど、私は今からリィンを受け取りに行く。そやからヘレン、先に行ってアル君を助けに行ってあげてな!」
「はい!」
そう言い、ヘレンは一人ゆりかごへと飛んでいった。
アルを助けるために。そして、父に会う為に…
だが、時間は刻々と迫っていた。
次回予告
フェイト「ゆりかごの軌道ポイント到達まで、あとわずか。」
フェイト「最終決戦の行方は星の光の先…」
フェイト「次回魔法少女リリカルなのはStrikerS 第二十一章」
フェイト「ファイナル・リミット」
フェイト「本当の気持ちに、Take off.」