▼第二十一章
「魔法少女リリカルなのはStrikerS アル=ヴァン編」
第二十一章「ファイナル・リミット」
─────ゆりかご内部──
アルは、ケロベロスに追い込まれ、絶対全滅の危機に立たされていた。
「……終わりだぁ!」
と、ケロベロスが床に倒れたアルに大剣を振り下ろそうとする。
だが、アルは左手をケロベロスに掲げてバインドを掛ける。
「ッ!?」
そして、アルは左足でケロベロスを蹴り飛ばす。
ケロベロスは、足を滑らせてその場に留まる。
蹴り飛ばし、体勢を整える余裕が出来、すかさず立ち上がる。
「エクスキューショナアアァァァァァ!」
魔剣の名を叫ぶと、柄の内部にカートリッジを装填し、ロードする。
ロードは一度では終わらず、2発、3発、4発、5発、6発、7発とリミットブレイクする。
すると、エクスキューショナーは原子まで分解され、再び再構築される。
その姿は、あの白き長剣とは違い、黒き大剣へと姿を変えた。
「リミットブレイクかぁ!?」
「これが、今俺が出せる全力だ!」
そして、ケロベロスがバインドを解いている時、アルは一足早く地面を蹴り、彼の元に迫る。
ケロベロスも慌てて、迎え撃つ為に地面を蹴る。
「はあぁぁぁぁぁあ!」
お互い凄まじい衝撃と共に剣を交える。
そして、すぐさま離れ、スピリットブレイカーを放つアル。
一方、ケロベロスは身体を捻らせ、姿勢を低くし地面を滑り、それを回避する。
そして、すぐさま立ち上がりアルに迫る。
アルも迎え撃つかと思えたが、アルはそのまま構えたまま動かず、エクスキューショナーの刃に紫の光が纏わりつく。
「ぬおおぉぉぉぉぉおお!」 「ッ、ふん!」
大剣を振り下ろしながら迫るケロベロス。
アルはそれを迎え撃つ形でエクスキューショナーを振り下ろす。
再び刃が交わる。
だが、ケロベロスのデバイスの刃にひびが入り、砕け散った。
デバイスが砕け散り、吹き飛ばされて床に倒れるケロベロス。
そして、ケロベロスの間近に迫り、エクスキューショナーを振り下ろそうとした時…
アルの身体が止まった。
全身に激痛と意識が薄れていく。
エクスキューショナーを杖代わりにして膝をついてしまう。
「ッ、ふん…」
アルの姿を見て、ケロベロスは微笑し、無数のナイフを精製しそれを集結させ、デバイスに再構築した。
そして、再び大剣へと姿を変え、アルに迫る。
アルは、息荒くしただケロベロスを見つめるしか出来なかった。
今までの戦いとリミットブレイクに身体が持たなかったのだ。
「グラディウス、リミットブレイク!」
ヘレンは一人、デバイスのグラディウスにそう呟くと。
弾倉にある二発のカートリッジをロードすると、素早く柄と弾倉を抑えていたところを曲げ、空になった弾倉を落とす。
そして、新たな弾倉を装着し、ロードする。そして、その弾倉を再び落とし…
それをニ、三回繰り返し、ひし形の魔法陣が展開される。
すると、ナイフの姿をしていたグラディウスの姿は、黒に染まった長剣のエクスキューショナーの姿をしていた。
「はああぁぁぁあぁぁぁぁぁあ!」
そして、エクスキューショナーを地面を斬りながらも、切り上げる。
それと同時に、刃から魔力衝撃波が放たれる。
それは、ヘレンの目の前の壁を軽々と貫通した。
その衝撃波は、次々と壁を貫通し、それはアルとケロベロスが居るところへ迫る。
「ッ、ん?」
アルは、迫り来る音と何かに気付き、ふと後ろを振り向く。
その音に、ケロベロスも足を止める。
時が過ぎていくと共に、音が大きくなるのが分かった。
アルは、ここを離れないと判断し、動かない身体を無理やり動かしてエクスキューショナーを杖代わりにしてその場から少しずつ離れる。
「ッ、こ、これは…」
ケロベロスは、大体何が来るか分かっていた。
だが、考えたたくもない事を考えてしまい、それに恐怖し、後ずさりする。
そして、ヘレンが放った魔力衝撃波はついにケロベロスの場所に到達し、壁を破壊しその姿を現せる。
「「ッ!?」」
二人ととも驚くが、アルにそれは向けられる事は無く、ケロベロスにそれは迫った。
だが、あまりの速さにケロベロスはそれに巻き込まれる。
「ぬほぉぉおぉぉぁあぁぁぁああ!」
そして、ヘレンはそれを放った瞬間、グラディウスを元の姿に戻し、右足の「神足」老王をビースト化させて高速に走る。
ケロベロスは、吹き飛ばされて壁に激突し動けなくなった。
ヘレンは、アルとケロベロスがいる場所に到着すると、一直線にケロベロスの元に走った。
その時、横から何かが飛んでくるのが分かった。
ヘレンは、それを何なのか分からず受け取ると、魔剣エクスキューショナーであった。
走りながらそれを確認し、アルの方を見つめるとアルが壁に寄り掛かりながら微笑を浮かべていた。
そして、エクスキューショナーを鞘から抜き、ケロベロスに迫る。
エクスキューショナーを握り締め、壁に倒れ掛けているケロベロスの首元に刃が突き刺す。
「ぶほぉあ!」
首に激闘が奔り、血が逆流して口から吹き出る。
「ヘ、ヘレ…─」
ケロベロスが娘の名を呼ぼうとした時、ヘレンはさらに刃を奥に突き刺して黙らせた。
「ふぐうぅ!」
それと同時に、再び口から血液が吹き出る。
すると、ふらふらの状態のアルがケロベロスに迫る。
「終わりだ、ケロベロス。お前の…負けだ。」
負け。という言葉を聞いた瞬間、ケロベロスの怒りの表情は消え笑みへと変わった。
その笑みは、一体に何を表しているのかそれは、ケロベロス本人しか知らない…
「負けか…そうか…またしても、勝てなかったか…」
微かな声でそう呟くと、ケロベロスの瞳から涙が流れた。
「今回は実際、ヘレンの助けが無ければ俺は負けていたよ。だから……んー、ドローだ。」
「ど、…ドロー?」
アルの言葉に耳を疑う。
自分のこのように負けた。それだけは確かだった。
「そうだ。だから、決着はあの世で、な?」
だが、それでもアルはあの世。という言い方で手を差し出した。
握手を求められ、ゆっくりと握ろうとした時、ケロベロスの手は床に落ちて息を引き取った。
「「ッ!?」」
それに衝撃を受けたのは、アルではなくヘレンであった。
エクスキューショナーが首に刺さったまま息を引き取ったケロベロス。
ヘレンはエクスキューショナーを放して俯く。
すると、横から肩に手が掛かる。
アルがヘレンの肩に手を掛けて自分の方に向けさせると…
「おい…何やってるんだ。」
その声に、一瞬驚いてアルの方を見つめるヘレン。
「お前は今、泣いて良いんだ!」
「ッ!?」
「泣いて、良いんだ…」
彼の記憶もほとんど無く、親に甘える事も出来ず、ただ戦いの日々。
そして、親と再会するが、結局は戦うことに…
彼女は、一度も親に甘える事も無く、肉親を亡くした。
ヘレンは、アルの言葉に親に甘える事も、何も出来なかった事に悔しさが湧き出てくる。
そして、肉親を殺してしまったという後悔と悲しみが彼女を包んだ。
「……ぅぅ…ッ!お父…さん。お父さん……うっく…うぅ……、はあああぁぁぁぁあ!あッあぁぁぁああはあぁぁぁぁぁぁ、うわあぁぁぁぁぅぅぁぅぁあああ!はあぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぅぅうぁぁあ!」
号泣し、息絶えたケロベロスの身体を抱くヘレンをどうしてあげれば良いのか、アルには検討がつかずただ、見つめる事しか出来なかった。
次回予告
なのは「事件が終わりを告げる時。」
スバル「そして、機動六課がその役目を終える時。」
なのは「離れ離れになっても、消えないもの忘れないもの。」
スバル「次回魔法少女リリカルなのはStrikerS 第二十二章」
なのは「約束の空へ」
「「Take off.」 」