▼「羽と大変な任務」 2
「おい、羽、いったいどうしたんだ!?」「何がですか?」
「何がっておまえ、中で今すごい音がしてたじゃねえか!?」
どうやらレキもあの音を聞いて飛んできたようだ。
「大丈夫ですよ、ただ本棚につぶされてただけですから。」
「おまえが?」
「いえ、ゼスト隊長がですけど。」
「は? なんで?」
「手が滑ったらしいですけどよくわかりませんね。」
「そうか…。」
レキは探偵のように手を顎にあて、考え込んだ。
「あの、レキさん。」
「なんだ?」
「アルピーノさんを探しにいこうとしてるんですけど、どこにいるか知りませんか?」
「ああ、メガーヌさんなら無限書庫にいたと思うけどなぁ。」
「む、無限書庫ですか?」
羽は情けない声で返事をした。
無限書庫には一度任務で行かされたことがあったが、あの膨大な量の本や資料の整理は尋常なものではなかった。
その際無限書庫の司書長にはずいぶん手伝ってもらった。
アルピーノを探すついでに司書長に会うのもいいと羽は考えた。
「まあ行ってこい。」
「はい。」
レキに見送られて羽は無限書庫へ向かった。
「アルピーノさん! ユーノ司書長!」
「あら、羽、任務終わったの?」
「お〜、久しぶりじゃないか、なんで寄ってくれないんだよ、こっちは来る日も来る日も本と向かい合わせだからね、誰かの顔がみたくなるんだからさ。」
「そうだな、今度からできるだけ立ち寄ってやるよ、でもアルピーノさんだって来ているんだからそうでもないんじゃないか。」
「まあね、アルピーノさんにはいろいろ教えてもらってるよ。」
「私は本に書いてあることを読んでいるだけですから。」
アルピーノはいつもどおり冷静で、ときには冷たく聞こえる声で言った。
「ところで羽、何か用事があって来たんじゃないの?」
「そうそう、ええと、クリスマスのツリーに使える木を探して取ってこいという任務を受けたんです、それでアルピーノさんにどこの木がいいのか聞こうかと思って探してたんです。」
「なんだ、やっぱりここに用ってわけじゃないのか…どうせ事件の時しか用はないわけだしね。」
ユーノが不貞腐れ始めた。
「ふう、司書長、あなたの活躍で大勢の人たちが救われているんです、そんなに不貞腐れないでください、私も来ているじゃないですか。」
「ありがとうございます、アルピーノさん。そうですよね、僕、がんばります。」
感極まったのか少し目が潤んでいる。
「話を戻すけど、木を探すならいい資料があるわ。」
アルピーノはそう言うとおもむろに、ある棚から本を持ってきた。
「第75管理区域に生息しているオオモミモドキがいいんじゃないかしら?」
「うん、きっとこの木ならちょうどいいよ。」
「そうなんだ、じゃあちょっと行ってきます、ありがとうございました。」
羽は礼を言って無限書庫を出ようとした。
「羽、私も戻るから途中まで一緒に行くわ。」
「そうですか、じゃあね、ユーノ。」
「それではまた今度。」
「うん、また。」
ユーノに挨拶をすると、すごく低いトーンで返事をしてきた。
かまわず無限書庫を出ると通信が入ってきた。
どうやらゼストのようだ。
「どうしたんですか、ゼスト隊長?」
「いや、おまえに木を取りに行くことを命じたが、たぶん一人では無理だろう、だからおまえに三人助っ人をつける、今二人には連絡がついているんだがもう一人に連絡がつかない、たぶ
ん無限書庫にいると思うんだが…」
「隊長、もしかして私でしょうか?」
アルピーノが横から顔を出してきてゼストに聞いた。