▼「羽と大変な任務」 3
「なんだ、やはり無限書庫にいたんだな、そのとおり、アルピーノにも助っ人にいってもらう。」「わかりました、メガーヌ・アルピーノ、ただいまをもって助っ人任務承りました、それより隊長は仕事をしているんですか、あまり忙しそうには見えませんが。」
「ん、今は治療中だ、さっき手首を痛めたんでな。」
そう言ってゼストは手首のほうへアングルを動かした。
手首には誰かが治癒魔法をかけているようで他の人の手が見えた。
「隊長、やっぱりさっきのが…」
「何かあったの、羽!?」
「はい、実はですね…」
「羽! そのことは口外しないでくれ。」
ゼストは一瞬声を荒げ、焦ったように羽の言葉を遮った。
「あ、はい。」
「いや、悪かった、それでは頼んだぞ。」
そういうとそそくさと通信を切った。
「いったい何なのかしら…」
「さあ…考えたんですけどあと二人って言うとあの二人しか…」
「そうね、間違いないわ、あいつが一緒だと大変になるわね。」
毒を吐きながらもメガーヌは微笑み、羽は苦笑いをした。
「さっき通信を入れたって言ってたみたいだからあの二人はもう行っちゃってるでしょうね。」
「待たせるとリボルバーやらフレイムやらが大変そうですから早く行きましょう。」
二人は急いで無限書庫からトランスポートまで走っていった。
「あ、お〜い、こっちだよ〜。」
トランスポートに行くと、クイントが手を振って位置を知らせている。
「ごめんクイント、ちょっと無限書庫に行っていたから…」
「いいっていいって、あの司書長、寂しそうにしてるからねえ。」
「ごめん、遅れたかな?」
「まあ、ちょっとね、でもちょうど私たちも来たところだから大丈夫よ。」
合流するとお互いのパートナーと話し始めた。
「そういえばあたしたちは羽の助っ人ってことなんだけどどこに行くの?」
「第75管理区域にあるオオモミモドキを採りに行くのよ。」
「よろしくお願いします。」
「私たちがいるんだから大丈夫よ、羽。」
ソラが自信満々に言い切った。
「クイントさんやメガーヌさんは心強いけどソラはなぁ…」
小さな声でぼそぼそ言ったのだがどうやら聞こえたらしい。
「へぇ〜、私じゃ頼りにならないって言うんだ、いっつも私に模擬戦で勝てたためしがないのにねえ。」
ソラの言うとおり羽はソラに模擬戦で勝てたためしがない。
「う、痛いところをついてくるね。」
「やっぱり羽はまだまだソラにはかなわないか。」
「ソラは剣と魔法のバランスがいいですからね、クイントもうかうかしているとやられてしまいますよ。」
「いやいや、この子たちにはまだまだ負けないよ。」
クイントが軽口をたたいた。
「「それならこの任務が終わったら勝負してください!」」
ソラと羽は二人で同時に挑戦状をたたき付けた。
「ふん、受けてたつわよ少年少女、メガーヌはどうする? あたし一人でもいいんだけど。」
「私は見ているわ、あなたが申し込まれた勝負だからね、それより早く行きましょう、日が暮れてしまいます。」
アルピーノの一声によって羽たちはやるべきことを思い出し、転送を開始した。
----第75管理区域
転送された四人は近くに街の見える森のようなところに現れた。
周りの木はとても高く、たくましい、まるで自分たちが小さくなったような錯覚を受けるほどだ。
「あ〜、何度やっても慣れないものだわ、転送って。普通に移動じゃだめなのかしら。」
クイントがなにやらぼやいているようだ。
「まあ仕方ないですよ、転送のほうがダントツで早いですから。」
羽が何とはなしに答えた。
「でも座標設定が面倒なのよ。」
「もう、クイント、無駄口叩いてないで行きますよ、ここら辺の木は全て大きく育っていますし苦労しますからね。」
「あの、メガーヌさん、どういうことなんですか? 私たち、ただ羽の助っ人に行ってくれって命令を受けたんですけど。」
ゼストからソラとクイントに明確な支持はなかったようだ。