▼「羽と大変な任務」 5
「ふう、やっぱり多いだけね、敵じゃないわ。」クイントが目の前の獣を叩き潰す。
そのとき獣なりに頭を使ったのか叩き潰した獣の後ろからもう一体が飛び掛ってきた。
「やばっ!?」
「クイント!」
だが飛び掛った獣の攻撃は横からの衝撃波に邪魔され、通ることはなかった。
獣の動きは一瞬止まり、隙ができた。
その隙を見逃すほどクイントは甘くない。
「ちっ、仕方ないか。」
クイントは両腕の手甲を使い、獣に連撃を加え、獣を倒した。
(大丈夫ですか、クイントさん。)
(まあね。)
先ほどの衝撃波は羽のものだったようだ。
(助かったわ、お礼に手を組んであげてもいいわよ。)
(ありがたいですがお断りしますよ、それより倒した数を競いませんか?)
(いいわよ、勝たせてなんてあげないからね。)
(では、通算でお願いしますよ。)
(負けませんからね、クイントさん)
ソラも前に出てきて、やる気になったようだ。
(聞いてた、メガーヌ?)
(ええ、できるだけのサポートはするわ。)
「(オーケー、)っし、やる気出てきたわ、リィボォルゥバァァァァァッシュゥゥゥゥゥゥットッ、連続っっっ!」
クイントは両手の手甲を連続で繰り出し、魔力球を打ち出している。
先ほどのものと比べると小さいが、連続で射出されているので範囲的には問題はない。
一発当たった獣は続けて二発、三発ともらっている。
「まずいぞソラ、クイントさん達、マジだ!」
「なら、あれやるしかないでしょ!」
「わかった!」
二人は獣から離れ、背中を合わせた。
「頼む、ソラ。」
そう言うとソラは羽のデバイス、ハル(ルール・オブ・ハート)に炎をまとわせた。
「いくわよ、羽!」
「おう!」
「「煉獄の、竜巻っっっ!!」」
二人はお互いの位置が変わるように動きながらデバイスを横に振りぬいた。
振りぬいた跡から炎が生まれ、渦を巻いて広がり、回転しながら上っていく。
一通り近くの獣を巻き込むと「煉獄の炎」を止めた。
アルピーノに強化されたクイントの「リボルバーシュート連射」と羽とソラの連携攻撃、「煉獄の竜巻」によってほとんどの獣を倒した。
残りも負傷しているはずだが逃げ帰ったようだ。
「これって勝負はどうなるのかしら?」
「ちなみにどれぐらい倒したんですか?」
「ふっ、なんと、29体も倒したわよ、過半数は倒してるから私たちの勝ちね!」
「うぅ〜、惜しかったなぁ、自分で7体、連携も合わせて合計15体は倒したんだけど。」
「ちょっと連携使うのが遅かったわね、私も魔法で10体倒してるけど、足しても足りないわね。」
勝負は羽たちの負けのようだ。
「そうね、でもあんなにクイントがのってたのにそれしか離されてないのはなかなかだと思うわよ。」
「そうね、ちょっとだけど私も本気出したわ。」
「勝負も終わりましたし、気を持っていきましょうか。」
勝負することで頭がいっぱいな3人は任務が木を取ってくることであるということを忘れていた。
「あの、メガーヌさん、この木、やっぱり傷んじゃいましたよね。」
最初に見た木をさすりながらソラはアルピーノに訊いた。
「そうね、ならこの木に魔力を流して治癒しましょうか。」
そう言うとアルピーノはデバイス、ユルルングルを起動し、木に魔力を流し込んでいく。
すると木はみるみる傷んでいた場所が治っていって、戦闘の前の状態まで戻っていった。