▼「羽と大変な任務」 8 
「わかりました、やってみます。」

そう言って寒空へ飛び立った。

隊舎よりも上、雲よりは下のところで羽は詠唱を始める。

「猛暑、寒冷、事象を操りし全ての根源を動かしむるを許さしめん。」

「ファーレンヘイト・フィールドッ!」

羽は魔力陣を展開する。

どんどん伸ばしていってついには隊舎を飲み込むほどの大きさになった。

「リミット、ゼロ。」

羽がつぶやくと周りの気温が下がりはじめる。

「トゥ、アンダー。」

さらに冷えて、小さな氷の結晶ができ始めた。

「よし、ウィンド、ブロー。」

できた氷の結晶を風で流し始める。

隊舎の方へとうまく流れていっている。

そのとき、隊舎のほうからソラが飛んできた。

「ちょっと、羽、水臭いんじゃない? それ発動してると動けないんでしょう?」

「まあね、本物が降るまではこうしてるつもりだよ。」

「まったく、こんなおもしろそうなことなら私がついててあげるって言うのに。」

「なんか、悪いな。」

「気にしないでよ、私だって好きでやるんだから。」

「え?」

「見てなさい、燃えたりし赤き弾丸、クリムゾン・ブレット!」

ソラは魔力球を一個作り出した。

「それをどうするの?」

「こうするの!」

ソラは今自分たちがいる高さより上の方に弾丸を放った。

高く高く上がっていくが、途中で曲がったり強く光ったり、弱くなったりしながら飛んでいく。

一通り動き終わって役目を終えたかのように消えると、文字ができていた。

自分たちからも、下にいる人たちからもはっきりと見えるように紅く、強い光を発して、「MerryChristmas」と。

羽はさっきのメッセージを作ったパートナーへと体を向ける。

「さすがソラ、いいこと思いついたね、ぼくもやりたいことがあるんだけど、いいかな。」

「だめ、羽はそっちでも魔力使ってるんだからこっちでも使ったら倒れちゃうわよ。」

「だめ?」

「だめ。」

「(´・ω・`)」

「o-_-)=○)≧Д≦)」

「痛いよ!?」

「しつこいからでしょ。」

ソラは笑いながら言った。

「そんなこと言っても殴るなんてさぁ…。」

「ごめんごめん。」

「それならちょっと魔力貸して。」

「はぁ、いいわよ、私が手を出しちゃったのが失敗だったし持ってって。」

ソラはため息を吐きながら羽に向かって手をのばす。

「そういえば何をするつもりなの?」

「うん、それなんだけど…」

羽がソラへ耳打ちをする。

「あ〜! いいんじゃない。」

「それじゃ、借りるよ。」

羽はソラの手を取って詠唱を始める。

「炸裂したるは燃えたりし赤き弾丸!」

羽は名もない魔法を空へと打ち出した。

しかしその魔法は真っすぐ飛んでいってある地点で爆発した。

爆発の跡からは魔法の欠けらが飛び出す。

魔法の欠けらは赤く燃えていたり、青く燃えていたり、赤く凍っていたり、さまざまだった。

下から見ている隊員達は色とりどりのメチャクチャな魔法を見上げては笑っていた。

「まあ、成功かな?」

「予想外なほどでたらめな魔法だけどね…。」

「くくっ、あははははは!」

「はははははは!」

空の二人は一瞬の思い付きが成功したことによろこび、笑いあった。

「ははは、みんな、Merry Christmas! まだまだいくよー、ソラ!」

「うん、どんどん撃って!」

クリスマスの夜に偶然に降った雪、舞い踊る魔法の花。

一夜に見せる二人の奇蹟だった。

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