▼第三話 
「羽の舞う軌跡」

第三章「羽と相方(?)」



羽は目を覚ます。

いつもの部屋とは違う天井、違うベッド、違う枕。

それぞれが新しく、清潔感がある。

「ああ、そうか。」(僕はシグナムさんに負けて、ここで休ませてもらってたんだ。)

「羽さん、起きてたんですね。」

シャマルが様子を見にきたようだ。

「そういえば、シグナムさんは戻ってきたんですか?」

「ええ、ずいぶん前にきてちゃんと提出したので心配はないそうです。でも、ト

ランスポートの向こう一年の許可願いなんてどうしたんですか?」

羽は少し困ったように答える。

「え〜、修業の旅に出ようかと思いまして。」

「そうなんですか、除隊届けも出してましたし、本気なんですね。」

「ええ、まあ。って、見たんですか!?」

「羽さんが寝ている間にシグナムから教えてもらってたんですよ。」

羽は自分の考えの甘さにため息を吐いた。

「提出するなら中身を出しますし、当然でしたね。」

「どこへ旅に行く気だったんですか?」

「いえ、まだ決めてないのでいろいろ行ってみようかと思っているのですが。」

シャマルは複雑な顔をして悩んでいる。

「どうしたんですか?」

「いえ、修業のできるいい世界があったと思ったんですけどね、思い出せないんですよ。」

羽はシャマルが真剣に悩んでくれていることに、うれしくなった。

「ん?うれしそうですね、どうしたんですか?」

「いえ、こんな自分のためにそこまで考えてもらえると思っていなかったので。」

「当たり前のことですよ。」

羽は医者というのはここまで面倒見がよいものかと、思ってしまった。

「ヴィータちゃんなら知ってると思うんですけど。」

「そうそう、あたしならいいとこ知ってるぞ。」

「ひゃあ!?」

いつのまにかシャマルの後ろから小さい女の子が話し掛けてきた。

そのことによってシャマルは驚き、おかしな声を上げてしまった。

「ヴィータちゃん、驚かさないでよ!それに羽さんも黙ってるなんてひどいですよ!」

シャマルは恥ずかしかったようで、赤くなりながら怒ってごまかしている。

ヴィータは満足そうだ。

「あ、そうだ、シャマル、あたしの部隊の奴が怪我しちまってよ、それで来たんだけど。」

「わかったわ。まかせて。あ、ヴィータちゃん、羽さんが聞きたいことがあるそうだからよろしくね。」

微妙に違う気がするが、羽は気にしないことにした。

「で、あんた、聞きたいことって何。」

「その前に、部隊の奴が怪我した、って言ってたけど、どういうこと?」

「そのまんまの意味じゃねえか。なに言ってんだ、お前。」

「いや、部隊の奴ってことは、部隊長なの!?」

「違うけど―――」

羽はほっとした。

いくら何でもこんな少女よりも自分が下だとは思いたくなかった。

「―――あたしは戦技教官だ。」

羽は崩れた。orz

「どうした?あたしは八神はやての守護騎士、鉄槌の騎士ヴィータだ。戦技教官くらいやれるさ。」

羽は初めてこの少女がシグナムと同じく、八神はやての守護騎士だと知った。

―ちなみにシャマルも守護騎士なのだが、羽は気付いていない。

羽は初めてこの少女がシグナムと同じく、八神はやての守護騎士だと知った。

―ちなみにシャマルも守護騎士なのだが、羽は気付いていない。

「そ、そうだったんだ…」

「そうだよ。あんたおもしろいな。名前なんて言うんだっけ?」

ヴィータは羽がショックを受けているのを見て、笑いながら名前を聞いた。

「ええと…」(ゼスト隊、除隊しちゃったから何て言おうかなあ)

「早く言えよな。」

「はい、無所属フリーの羽です。」

羽はつい、上官に命令されたときのように答えてしまった。

「ははは、おもしれえ、別に固っ苦しくなくてもいいんだぜ。」

ヴィータはさっきから笑いっぱなしである

「癖になってるんですから、仕方ないんですよ。」

「フリーってありかよ。」

「除隊届けを出したので。」

「なんで除隊届けなんか出してんだよ!」

いきなりヴィータが怒りだした。

「隊が気にくわねえってのか!なんだ、それとも怪我か!理由を言ってみやがれ!」

「待ってください、ちゃんと話すので、まず、落ち着いてください。」

「納得できねえ理由だったら、ぶっ殺すからな!」

ずいぶん物騒なことを言っている。

「はやてさんに新しく作る部隊に来ないかって誘われたんです。」

「てめえ、はやてをだしに使おうってのかよ!」

「落ち着いてください。それだけじゃないですよ。独断専行してしまって、簡単に言えばクビです。」

「でも、自分で出したんじゃねえのかよ。」

すっかり先程の勢いがなくなり、最後の方はほとんど聞こえない。

「一応自主的に除隊としたほうが穏便に済むんですよ。」

「そんなのおかしいじゃねえかよ。」

「いいんですよ。」

「よくねえ!」

ヴィータが声を荒げた。

「お前がフリーだって言うなら、おまえは今からあたしの部下だ。」

「ええ!」

ヴィータからのとても急な提案、もとい命令が下された。

「ええ、じゃねえ、今からおまえはあたしの部下だ。」

「部隊には入りませんよ。」

「う、部隊に入らなくてもおまえはあたしの部下なんだよ!」

もはやなにを言っても聞いてくれそうにないので羽はあきらめ、部下になることにした。

「わかりました。なら、隊長と呼べばいいんですか?」

「いや、あたしのことはボスと呼べ。」

「わかりました。ボス。」

ヴィータは満足そうだ。

「そろそろ本題に入っていいですか?ボス。」

「おう、いいぞ♪」

「修業に適した世界はどこでしょうか。」

「あたしが連れてってやるよ。もう仕事も終わったしな♪」

「いいですよ!そんな!」

「嫌なのかよ」

ヴィータが泣き目になりながら声を強ばらせる。

さすがに泣かれるのは困るし、なにより心が痛んだ。

「ボス、お願いします。」

ヴィータは目をこすり、表情を明るくした。

「しかたねえなあ。そこまで言われちゃ断れねえよな。」

「ボス、トランスポートの使用許可ももらってますよ。」

「部下のくせに準備がいいじゃねえかよ。いくぞ。」

「了解です。ボス!」


実際ヴィータだけでなく羽もノリノリである。


そして、トランスポートから旅立った
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