▼第四話 
「羽の舞う軌跡」

第四話「羽と修業withボス」


ヴィータに連れられ、羽は見たことのない世界にきていた。

周りは見るかぎり砂だらけだ。

「あ、暑い…」

「うっせえな、言われなくてもわかってんだよ。」

「ここって何なんですか」

「ここは、あたしが砂竜と戦ったとこだ。」

「砂竜!?竜を倒すなんてできるんですか!ボス!」

「まあな♪」

少し照れているようだが、うれしそうだ。

「もうここには砂竜はいないんですか?」

「まだいるだろ。倒したって言っても殺しちゃいねえし…」

ヴィータは昔を思い出すように考え込んでいる。

すると、下から振動を感じた。

だが、ヴィータは考え込んでいて、気付いていない。

「ボス、下!間に合え、swift move/ スウィフトムーブ」

羽は、ヴィータを突き飛ばした。

その直後、ヴィータが歩いていた場所の下から砂竜が現れた。羽の身長の3倍はある。

羽は突き飛ばしたと同時に離脱もしていた。

「ってえ、なにしやがる、このやろう!え、砂竜!?くっそ、グラーフアイゼン!」

「ボス、上へ。」

「お、おう。」

「「打ち貫く数多の弾丸」、クリスタル・ブリット、セット。」

羽は自分の周りに5個の氷柱を作り出した。

「アイゼン、テートリヒ・シュラーク!」

羽が氷柱を作り出す間に、ヴィータは4つの鉄球を放った。

「(砂竜は堅そうだな。)ブリット、3、サクセッション!」

ヴィータより遅れて、羽の作り出した氷柱が連なり、すべてが砂竜にあたる。

しかし、ヴィータの撃った鉄球のダメージはあるのだが、羽の攻撃ではあまり効果がないようだ。

「やっぱりこの暑さだと威力は減るか。」

「ぼさっとすんな、来るぞ!」

砂竜は口から火球を吐き出した。

羽の周りにあった残りの二つの氷柱が蒸発した。

「そんなのあり!?」

「気ぃ付けろよ、当たったら消し飛ぶぜ。」

なんとか回避に成功したようだ。

しかし、砂竜は火球を二人の間に打ちこんだため、離れ離れになってしまった。

「ちっ、まじいな。」(ボス、試したいことがあるので時間を稼いでください。)

ヴィータが悪態をついているときに、羽から念話が送られてきた。

(馬鹿やろう、こいつに時間をかけちまったらやべえんだよ!)

ヴィータが羽に念話を送るが、気付いていないようで、何かしている。

―羽はヒメに魔力を送っていた。

「これを自分に逆流させれば―」

ヒメから魔力を逆流させたとき、下から砂竜が火球を放った。

「ちっ、この馬鹿やろうが!」

そう言って、ヴィータが火球を打ち返した。

しかし、ヴィータはかなり体力、魔力を消費したようである。

「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」

羽の叫びが聞こえる。

「どうした!」

羽はヒメからの魔力の逆流に耐えていた。

「あぁぁぁぁぁぁぁ!!くっ、「息づくものへの永遠の灼熱」ぅぅぅ!!スパイラルッ・フレイムゥゥゥ!!」

羽は悲鳴のように詠唱を唱えながら、スパイラル・フレイムを砂竜に放った。

砂竜に当たり、燃え上がっている。

逆流した魔力を制御できてきて、痛みが落ち着いてきたようだ。

「燃えろぉぉぉぉぉ!!」

「やめろっ!」

ヴィータが羽を制止し、羽は指を鳴らして炎を消した。

砂竜は地を震わせ、音をたててその場に倒れた。

「はぁ、はぁ、どうして止めるんですか!」

「うっせえ、馬鹿!」

ヴィータは怒鳴り散らした。

「おまえ、あいつを殺そうとしてただろ!」

「っ!それのどこが悪いんですか、こっちを殺そうとしたんですよ。」

羽は自分がいつのまにか砂竜を殺す気だったことに気付いた。

だが、口を突いて出たことばは、ただの言い訳だった。

「管理局の仕事は殺すことじゃねえだろうが。」

「……」

「あたしはもう、殺すのも殺されんのもたくさんなんだよ…」

ヴィータは何かを思い出しているように黙っている。

羽も、昔のパートナーを思い出しているのかもしれない。

沈黙が流れる。

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

「すみませんでした。」

沈黙を破ったのは羽だった。

「必死になりすぎて、僕の昔のパートナーのことばを忘れてましたよ。」

どこか物悲しい笑顔でヴィータに話し掛ける。

ヴィータはそのことばと表情で何があったか予想がついた。

「おまえには、もう必要としてくれてるところがあるんだ。だから、泣くなよな…この、馬鹿…… 」

羽は泣いていない。

だがなぜか、ヴィータが泣いている。

「ありがとう。」

羽は、自分を思ってくれて泣いているヴィータの頭を撫でてやった。

「うるせえ、勝手に撫でんな。」

そうは言うが、嫌がるような素振りの欠けらも見えない。

ようやく落ち着いてきたのか、ヴィータは涙を拭う。

「部下のくせにボスの頭を勝手に撫でてんじゃねえ!」

元気になったせいなのか、手を払い除けた。

顔が心なしか赤くなっているような気がする。

羽はそれがおかしくて、笑った。

ヴィータも怒りながらだが、笑っていた。

また、下から揺れが来る。

「また来るぞ!準備はいいか、羽!」

「いいですよ、ボス!」

今度は砂竜が三体同時に現れた。

「羽、そっちの一体はまかせたぞ。早めに倒せよ。」

「り、了解…」

羽は一体を引き付けるために、詠唱を始める。

「「打ち貫く数多の弾丸」、クリスタル・ブリット。ブリット、5、サクセッション」

撃ちだした氷柱は首の辺りに当たった。

先程よりも数を増やしたのがよかったのか、少し効いたようで羽の方を向き、火球を放った。

「くっ。」

少しかすったが、回避できた。

そのまま砂竜に近づいていく。

「(魔力も減っているし、近接攻撃で仕留めるしかないか。)空閃剣っ!」

クリスタル・ブリットが当たったところに衝撃波を撃ち込む。

「グォォォォォ!!」

砂竜は苦しそうにうなる。

だが、羽は立て続けに同じ所に攻撃を加えていく。

「襲騎閃っ!連閃剛衝っ!」

砂竜がよろけ始めた。

「今だ、凍れっ!氷嶺騎閃っ!」

砂竜にハルを突き刺した。

「グォォォォォ!!!」

刺したところから凍っていき、砂竜の首を氷で包み込んだ。

本来なら人の体すべてを凍らせることができるのだが、大きすぎて凍らせられる

限界を超えていた。そこで仕方なくハルを抜いた。

「首が凍れば全体が凍ったも同然だし、まあいいか。」

羽はヴィータの下に急いだ。


――「羽、そっちの一体はまかせたぞ。早めに倒せよ。」

「り、了解…」

「ふう、こっちはこっちだな。砂竜2体なんざ軽くぶっつぶしてやるぜ! テートリヒ・シュラーク!」

ヴィータは、二匹の砂竜に2つずつ、計4つの鉄球を撃った。

全弾砂竜に命中した。

しかし、2発ずつだったため効果は薄い。

「ちっ、各個撃破といくか!アイゼン、カートリッジロード!」

ヴィータはグラーフアイゼンにカートリッジをロードし、形体を変えた。

ハンマーの片方にスパイク、また片方にはブースターが付いている。

「いっけぇぇぇ、ラケーテン・ハンマーァァァ!!」

片方の竜の頬をスパイクの方で思い切り殴り飛ばした。

そして、ブースターを点火し、勢いを付けてもう片方の竜に突進していく。

「吹き飛べぇ!」

もう一体の砂竜は、先程の砂竜よりも勢い良く吹き飛んだ。



羽が終わったようで、ヴィータの所に飛んできた。

「あ、ボス、終わってたんですね。」

「おせーよ、にしても、ずいぶんエグイやり方で終わらせてきたな。」

ヴィータは首だけ凍って、動けなくなっている砂竜を見て言った。

「僕としてはボスのほうがエグイと思いますけどね。」

羽は顔面を横から殴られて泡を吹いて倒れている砂竜を見て言う。

「「ぷっ、あははははは」」

二人はおかしくて笑った。

「ボス、魔力がもう残ってませんし、戻りませんか。」

「そうだな、あたしもあんまりカートリッジ持ってきてねえし。」

「決まりですね。」

二人は本局へ戻っていった。
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