▼第五話 
「羽の舞う軌跡」



第五話「羽と八神家の家訓」



「じゃあ、飯にするか羽!」「わかりました。何持ってきますか?」

「そうだな…あたしはラーメン、オムライス、スパゲッティ、カツ丼、デザートにアイスの取り合わせ!」

「それは食べ過ぎですよ。」

「そうや、食べ過ぎは体に毒なんやから。」

「え、えぇぇぇ!はやてさん!?」

「あ、はやて。」

いつのまにか後ろからはやてが現れた。

二者二様だ。羽は驚き、ヴィータはあっさり返事をする。

羽の声に反応して、食堂で夕飯を食べていた隊員達の目が集められた。

「なんよ、羽、うるさいよ。」

はやても敵になって、踏んだり蹴ったりである。

「ど、どうもすみませんでした。」

さっきまで目を向けていた隊員達は食事に戻った。

「ふぅ、何でここにいるんですか、はやてさん。」

はやてが敵に回ったことを軽く根に持ちながら言う。

「冗談よ、冗談、そんなに睨まんといて。」

「羽がはやての敵になるんならあたしははやての味方になるからな。」

ヴィータの目がマジだ。

「いっそ泣きたい。」

「ヴィータ、いじめたらあかんよ。」

「わかってるよ、はやて。」

「(もうどうにでもしてくれ、)で、どうしてここにいるんですか?」

羽はあきらめたように言った。

「何って決まっとるやないの、食事やん。」

「ただの食事でここまでいじり―「ならはやても一緒に食おうぜ!」―もう、いいです。」

羽は完璧にあきらめた。

「あ、羽、あたしスパゲッティな。」

「じゃあ、わたしはたこ焼きで、冗談やって。オムライスでお願いします。」

はやてはボケたが、羽が泣きそうな目をしていたので言い直した。

「持ってくるの僕なんですね、まあ行きますけど。」

羽はぼやきながら頼まれたメニューを注文しに行った。

「さ、て、と、ヴィータぁ、聞きたいことあるんやけどぉ、なんで羽と一緒におるんやぁ?」

「は、はやて!?」

ヴィータは、はやてが八神家の母(怒り)モードだということに気付いた。

「ヴィータは羽と知り合いやったかなあ?」

「いや、羽とは今日知り合ったんだ。ほら、あたしの隊の奴が怪我したんだよ、それでシャマルのところに連れていったんだ、そしたら羽がいてさ、修業にいい世界はないかって言うから一緒に行ってきたんだよ。」

ヴィータは、早口で冷や汗をかきながら言った。

「そうか、そやったら、羽が修業に行く理由は知っとるか?」

「え、ああ、それならはやてが作ろうとしてる新しい部隊に入るためって羽が言ってたよ。」

「羽が言っとったのを聞いたんやな?」

「そ、そうだよ。」

はやての沈黙が恐ろしい。

ヴィータはどうしてこんなことをはやてが聞くのかわからなかったが、嘘を言えば八神家の家訓にしたがって、恐ろしい罰が待っている。

ちなみに、ヴォルケンリッターは全員罰を受けたことがあるが、話すのも恐ろしいと言って、真相を語ったことはない。

「ならええんや。」

ヴィータの無実が証明されたようだ。

それとともに、羽が料理を持って戻ってきた。

「お待たせしました。お客さま。」

「どうも、ウェイターさん。」

「なんでもいいから、早く飯食おうぜ。」

「少しは乗ってくださいよ。何を焦ってるんですか?」

「そうやヴィータ、今のは貴重なボケなんやから。」

「あれ、汗すごいですよ、ボス。どうしたんですか?」

「気にすんなよ、羽!」

ヴィータは無理にテンションを上げているようだ。

「そうや、羽にも聞いときたいんやけど、わたしの通信を盗み聞きした奴が居るんよ。誰か羽がわたしの部隊に来ることを知っとった人、知らん?」

ヴィータが小刻みに震え、冷や汗をかいている。

羽はただならぬはやての雰囲気を感じ取った。

「今のところは、ゼスト隊長がいつのまにか知ってたってぐらいですかね。シグナムさんは通信もらったって言ってましたし。」

空気が凍り付いた。

「ん? 今何て言うたん?」

「はい!? ええと、ゼスト隊長がいつのまにか知ってたってぐらいですかね。」

「そのあと。」

「え、シグナムさんは通信もらったって言ってましたし。」

凍り付くどころか、稲妻が走っているようだ。

「そうか、シグナムやったんや〜、ふ〜ん、そうなんや〜、シグナムなんや〜。」

はやては笑顔だが、あてられそうなほどの怒りの黒い空気を身にまとっている。

「羽、おまえのせいでシグナムは死んだよ。」

「え、ボス、冗談ですよね。」

「あいつは、口うるさかったけど、いいリーダーだった。」

「え、ちょ、えぇぇぇ!」

「ふ〜ん、シグナムやったんや〜。」

はやてとヴィータは遠い目をしている。

―その頃のシグナム

「ん? 今アインスが手招きをしていたような?」

「しっかりしてください!シグナムさん、模擬戦だからといって手を抜かないでください。」

「すまない、立ちながら夢を見ていたようだ。」

「いきますよ。」

「来い!」

さよなら、シグナムさん。
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