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「は、はいいいいいい?」
梶山がものすごい引き攣った顔をした。
「……すまんね」
「ホントすまない」
和成先輩と橘先輩が梶山に頭下げて謝った。
「あ、あの、新しく会計のヒト、追加募集ってのはしないんですか?」
「……新人二人入ってもメンドーって言うか教える手間二倍だから、ここはひとつ梶山君に頑張ってもらうってことで……」
「ええええええーーーーーーーっ!マジっすか!」
梶山の叫び声が、生徒会室に響き渡る。
「だからすまないねって。それで負担が梶山君に増える分、他の仕事はええと残りの二人で手分けしてってカンジで……」
「えーーーーーーーーーっ!」
桜庭も、叫んだ。俺は叫び声すら上げられなかった。
「しかも鈴原は役に立たないから、当面は俺と橘で、橘が転校しちまったらオレと君らで仕事回す。梶山君は会計職に専念してくれ」
ちょっとまってよそれ、生徒会メンバー合計六人のハズが、一人抜けて、一人は実務に役に立たなくて。それから三人は俺達新人で……、ってことは残りの一名であるところの和成先輩がめちゃめちゃ大変ってことだよね。そーだよね。
「あ、あの、先輩」
思わず俺は声を出してしまった。
「それじゃ、先輩の負担がものすごおおおおおい大きいってことじゃ……」
「あー……、ま、なんとかなるだろなんとか。ってかやるしかねーっての」
あははははは、とか和成先輩は笑ってたけど、その笑いは乾いてた。
だって大変だよね。生徒会の仕事内容なんてまだ想像もできないけど大変だってコトしかわからないけど。和成先輩だって副会長になったばっかりなんだよ。
「わかりました。とにかく俺、一日でも早く仕事覚えて先輩の足引っ張らないようにしますっ!」
とにかく俺はそう先輩たちに向けて、宣言みたいに言い放った。
挨拶もそこそこに、もうバリバリと、仕事覚えなきゃって必死になった。
和成先輩に会ったら入試の時のお礼とかシャーペン借りたままになってますとか言うつもりだったんだけど、そんな暇もなかった。それどころじゃないってカンジで。
俺は桜庭とか梶山みたいに要領もよくないし頭もよくない。だから、真面目にコツコツ積み上げるしかない。とりあえず本とか読むのは苦にならないから。過去の議事録を順に、片っぱしから読みだして、疑問点不明点を端から全部和成先輩に聞いた。それを全部メモとって。そうしているうちに議事録の書き方とか資料の作り方とか年間の仕事のスケジュールとか少しずつ覚えて行った。でも資料関係めちゃめちゃ多いから一日二日どころか放課後毎日生徒会室に行って勉強してみてもなかなか終わらない。だからお昼休みとかも俺は生徒会室に籠ってそういうの読みながらお弁当食べて、読むのは昼にやって、疑問点書きだしておいてその個所に付箋とかもつけて間違えないようにって、それを放課後にまとめて聞くようにしてた。とにかくちょっとくらい仕事遅くてもいいから正確に、細かいところにも気を配ってってそういう感じでなんとか生徒会の仕事をこなしていった。


続く





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