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そんなこんなであっという間に橘先輩が転校しちゃって生徒会のメンバーは五人になった。今日も俺は生徒会室で自主勉強。独りで生徒会室籠るかなって思ったけど、今日は何故だか桜庭も来てた。
「あれ?桜庭?」
「よお、べんきょー邪魔するけどいい?」
「いいけどどうしたの?桜庭も何か調べ物?」
「うんにゃ。違う。……今泉はまた議事録とか読むんだよな?」
「うん。もうすぐ定例会あるでしょ。予習的に」
「努力家だねお前ってば」
「だって俺、桜庭みたいに頭も要領もそんなに良くないから。努力しか出来ることないじゃん」
未だに、議事録の書き方とか迷うし。そんでもってメモ、必ず読み返して。それでもわかんないところだけ和成先輩に聞くようにして。だって先輩、本気で死にそうなほど忙しいし。予告されたとおり、鈴原会長は……通常の仕事では本気で役に立たなかった。手が足りないからってやってもらうと……後から直すほうが大変だった。だけど、例えばみんなに何か提案したり、議長務めたりっていう時はすごいパワーでさ。元気、だからかな?明るい人だからかな?わからないけど。ええと、生徒総会とかさ、普通ダレて寝るやつとかふざけて遊ぶヤツとか出るはずなのに、みんな鈴原会長の言葉しっかり聞いてる。その場の雰囲気明るくしてくれるパワーってのがあるみたい。ひまわりの花みたいだって俺はいつも思うんだ。ええと話ズレたか。鈴原先輩はそういうすごい人だけど、でも、ね。実務が……ね。俺も桜庭も梶山もまだまだ新人だから、和成先輩の判断待ちって時もよくあるし。だから生徒会の業務って今は実際には今和成先輩が一人で何とかしているようなものなんだろうし。
だからこそ、早く俺は。
和成先輩の役に立ちたくて。少しでも和成先輩の負担減らしたくって。
去年とか一昨年とかの議事録読めば毎年出てくる問題点もわかるし、必要事項もわかる。……まあ、例年と今年と全く同じってわけにはいかないけど。何せ今年は会長が鈴原先輩だ。より面白くってカンジで新しいこととか次々提案してくれるから。それはいいことなんだしみんな喜ぶけど。……和成先輩の負担が倍増。
「すげえって褒めてんのよ?」
「すごくないよ。メモとか取らなくても全部覚えちゃってる桜庭のがすごいと俺は思う」
「オレのは単に記憶力ってだけでしょ?そんなの持って生れたものだし」
「そっかなあ?」
「そーだよってそんな話したいんじゃなくてさ、ええと……ちょっと、いいか?」
「なに?」
わざわざやってきたのは相談とかあるからなんだろうか?桜庭は俺の耳の傍で声をひそめて小さく言った。
「あのさ、今泉がそんなにがんばってるのって、やっぱ和成先輩好きだからだよな。で、聞きたいんだけどさ。それって……憧れ?それともそれ以上?」
「は……?」
言われた意味がよくわからなかった。憧れ……ってのは前に桜庭に言ったことがある。
憧れのヒトに近づきたいから生まれて初めて頑張ったってそんなふうに。でも。
確かに俺は和成先輩に憧れて、話とかしてくてお礼言いたくて生徒会に入った。……未だにあの日のお礼とか出来てないけど。先輩のシャーペン、大事に仕舞ったままだけど。だけど憧れてた、ずっと。今も変わらず。
でもそれ以上って何?
「憧れ以上って……何?」
「だーかーらー。レンアイって意味」
レンアイってその言葉が「恋愛」なんだってわかるまですんごい時間がかかった。
恋愛って意味で俺が和成先輩のコト、好きなのかって桜庭は聞いてきた……のか?
「え、えええええええええええええっ!」



続く



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