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俺はびっくりして思いっきり叫んだ。桜庭は耳抑えてるし。
「……いきなり怒鳴るなよ。鼓膜破れっだろー?」
「だ、だだだだだだだだだって桜庭っ!」
「違えの?」
答えられなかった。
「先輩は、男のヒト……だけど」
へ、ってカンジに桜庭は笑った。
「そーんなのカンケーねえじゃん。言っておくけどオレの好きな相手オトコよ?」
「うそおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
「だーかーら叫ぶなって」
「ご、ごめん。だって……」
びっくりした。驚きすぎてもう何も言えないくらいびっくりした。俺は桜庭の綺麗な顔、まじまじと見た。
「そー見なくてもいいじゃん」
「あ、ごめん……」
「で、さあ。今泉が和成先輩をどう好きかってのによってオレの今後の作戦が変わるから。確認にってさ」
桜庭の好きな……その、男の、相手のヒトと、俺が和成先輩を憧れてるのかそれ以上かがどう関連するのかわからない。
「えっと、何か関係あるの……?」
「関係大アリ。だってオレが好きなのこーちゃん、じゃねえや向陽会長だもんな。前にちらっと言っただろ?オレも今泉と同じである人を追っかけて生徒会入ったんだってさ」
「それが、鈴原会長……?」
「そー。ガキん時からずっとな。だけどあの人昔っから和成先輩にべったりだからさー。今泉がもしもあの人のこと好きならオレ協力するよ?今泉が和成先輩とくっついちゃえば、会長をオトすのすげえ簡単になるしな」
「え、ええとー」
「だからさ、今泉は和成先輩のコト、どー思ってる?憧れてるだけ?それとも……?」
答えられなかった。
俺の脳内キャパシティいっぱいいっぱいでショートした。
でに桜庭もこの日は俺を問い詰めたりはしなかった。
「はっきりしたら教えてなー」
なんてあっさり先に帰って。
でも俺はそんなあっさり思考切り替えられなかった。
生徒会室後にして家に帰った後も、夜になってベッドに入ったその後も。夜が明けて朝になって、学校に行って授業を受けて……。その間ずっと考えてた。
和成先輩への気持ち、を。
憧れだと思ってた。
だけど、言われてみて初めて気がついた。
この気持ちはそんなキレイなだけじゃない。
……どうしよう。
だって無理だ。和成先輩は正直すごくモテる。いろんな人に告白とかされて、で、それほとんど全部断ってる。梶山なんかが半分ふざけて「もったいねーっすねえ」とかぼそっと言っても「ん?オレは同級生とか年下ってタイプじゃねーんだワリイけど。大人な女しか相手にしたくねえの。メンドー嫌い。っていうか面倒なのは鈴原だけで充分だ」ってカンジに流して。
……だったらオトコで、下級生の俺なんて論外だろう。
無理だ。どう考えても無理だ。


続く



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