▼ようやく金曜日 The Friday finally comes
浜田の誕生日まであと四日。今日も浜田は気付かない。もう当日まで気付かないんじゃないかと思う。もしかしたら当日も気付かないかもしれない。そうなったら俺が言うしかないのか。気が重いな・・・。泉は購買で買ってきたメロンパンをがつがつと頬張りながら、次に当たる場所の予習をしている。勿論田島や三橋も各々が食べ物を口にしている。一人浜田だけがうんざりとした顔をして、三人を眺めている。
「よくそんなに食えるよな〜」
「は?こんなん普通だろ」
「いや、でもそれでまだ昼も食べるんだろ。食い過ぎだって」
「そんなことねえよ」
「う・・・うん」
まあ確かに田島や三橋の食欲には驚くが、それでも浜田が食べなさ過ぎなのだ。他の運動部のヤツらだって間食をしているやつは沢山いる。浜田は部活に入っていないからそれもしょうがないことなのかもしれないが。
「あ、そのベーコンのヤツおいしそう」
「何だ、結局欲しいのかよ」
泉はベーコンとチーズの入ったパンを半分にすると片方を浜田に渡す。浜田はビックリしたようで、中々上手くパンを受け取れない。
「あ、ありがとう泉」
「別に」
丁度おなか一杯になってきたところだったから。ベーコンがそこまで好きじゃなかったから。いろいろと言い訳じみた理由が浮いては沈んでいく。本当はただ浜田にあげたいと思っただけ。
浜田と半分にしたからといって味が変わるわけでもないのだが、なぜか半分のパンはとても美味しかった。なんて照れくさくて言えないけれど。
浜田と目があった。浜田はとても嬉しそうな顔をしていた。
2006.12.15