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戦後-いくさのあと-




 馬超はふだん、それほど派手ないでたちをしているわけではなく、むしろ簡素であるほうだ。
 だが、戦に出るときは別である。
 輝かんばかりの白袍に、金糸でずっしりと綺羅の文様を縫い取った豪奢な武袍を重ね、普段は奔放に散らした髪も櫛をあてて結わい上げ、勇ましくも気品あふるる風情である。
「お前ほど、錦が似合う男もいないな」
 見下ろした趙雲は、うっそりと微笑んだ。平時は横柄で幼稚なふるまいが目立っても、戦中でこうしてみると、西涼が錦の名に恥じず、凛々しい上にも麗しい。
「馬超」
 幕舎の床に押し倒した馬超の腰帯を、趙雲はゆっくりと解き外した。帯は絹で、なめらかな肌触りが心地よい。豪奢な錦の戦袍を乱す愉悦に、趙雲は喉を鳴らした。あらわるるのは、硬質にもうるわしい膚である。
 何枚か重ねて着込んだ衣をまとめて肌蹴ける。夜気にふれた膚がたじろぐのも意に介さず、胸の朱尖を舌で含んだ。舌をつかって転がすとびくりと過敏に反応は返すものの、馬超はおとなしくする気はないらしく、ぎらぎらと光る目で趙雲をねめつけ、隙あらば蹴ろうとする魂胆である。
 じっくりと膚をなぶりたかった趙雲だが、縛られてもなお暴れんとする馬超に顔をしかめ、裾から忍ばせた手で内側から衣を掻き分け、肉芯を掴んだ。
「ぁ・・っ」
 急所を握られ、狼狽した声を上げた馬超の腰が浮く。目尻を赤く染めるところなどは可愛いものだと、趙雲はほくそ笑み、茎の付け根から先端までをすりあげる。尖った悲鳴が上がるのを機に組み敷いた体から力が抜け、何度かさすっているうちに馬超のものは勃ちあがった。豪奢な武袍の下で趙雲の手は馬超の肉身をなぶり、乱した胸もとでは胸の朱尖に舌を絡めた。
「ぁ・・あ、あぅ・・ん・っ」 
 ぎらりと殺気さえ漂わせていた馬超の目が潤み、漏れ出す声もまた濡れはじめている。下肢では先端が潤み、にじみでた粘液が趙雲の手を濡らした。根もとから搾り出すように練ってやれば、短い悲鳴が上げて馬超が四肢を強張らせ、今にも達せんとするように眉を寄せた。
 若いなと半ば感心しながら、いまにも極まりそうな肉身から趙雲は無情にも手をはなした。
「・・ぁ・・趙・・雲」
「自分だけ愉しむなんて、つれないな、馬超」

 明かりをともす灯明の皿から油をすくいとり、衣の中で手を後ろへとすべらせると、後ろの奥処に塗りこめ、わななく股を押しひろげた。
「私も楽しませてくれ」
「ちょ、趙雲、まだ」
 目をあけた馬超が上擦った声で静止をかけるのに、趙雲はやさしげに微笑んだ。
「暴れた罰だ。我慢するんだな。傷は、つけないようにしよう」
「待っ、無理、だ・・!」


 逃げを打つ腰を引き戻し、趙雲は強引に挿入した。馬超は目を見開き、次いでぎゅっと閉じて、唇を震わせる。ろくに馴らされずに挿れられたら、苦痛しか感じない。矜持の高さから必死に声を噛んでいた馬超も、何度か突き上げられると、悲鳴を上げた。
「・・・お前の中、絡み付いてくるな」
「ああっ、あ、い、ぁ・・・!」
「・・そんなに締めるな、馬超」 
「ぅ――ぁ・・痛い・・趙雲」
 抜いてくれるか、せめて少し馴れるまで動きをとめてくれるかという馬超の切実な期待は、しかし無情にも裏切られる。
「そんなに声を上げては、兵に気づかれる」
 趙雲は懐から出した布を、馬超の口に押し込んだ。堅い感触のそれはたちまち唾液を吸い取り、喉をふさがんばかりに舌にからみつく。
「ぅ――・・!」
 苦しさに目を潤ませる馬超の頬をやさしく撫でて、趙雲は律動を再開した。えぐるように突き、ずっと抜き出しては、また突き上げる。奥をえぐられるたびに馬超は、口中を覆う布の中でくぐもった苦悶の悲鳴を上げた。
 じわじわと涙がにじんでくる。
「馬超・・・仕方ないな」
 苦笑いした趙雲が、口中に押し込まれた布を取った。罵詈雑言を吐いてやろうと思うも、喉がひりついて声がつまった。趙雲の唇が重なる。せわしなく出入りする馬超の呼吸を奪うようにしっとりと合わされ、舌をからめて吸われた。勢いを失いかけていた馬超の肉身が、ふたたび芯を取り戻す。それを見越していたように、趙雲は馬超のそれを手で包み、やんわりとしごいた。同時に、馬超の内部が収縮して趙雲を締め付ける。
 唇を離して、趙雲は短く息を吐いた。
 かたくなで誇り高い馬超だが、彼のの内部はその気質に反して溶けるほど熱く趙雲の肉塊を包みこみ、愛撫に反応しては締めつけを強くする。
 ほんらい雄を受け入れるべき場所ではないそこは狭くて熱い。なかはもうぐっしょり濡れて、抜き差しにほとんど支障はない。
 熱く締め付けてくる感覚を愉しみながら趙雲は、馬超のものを擦ってやる。整った容貌が唇をわななかせて悶えるさまが、たまらなく官能的だった。
 ふたたび口を重ねる。後頭部に手を回して頭を引き寄せ、、喘ぎ声が漏れないように口唇を合わせる。もう片手で趙雲は馬超のふとももを彼の胸につくほどに抱え上げ、深く貫いた。
「ぅ、ふ・・・ん、んっ!」
 馬超が上げた呻きも喘ぎも、趙雲の口の中に溶けていく。
 しばらく口を塞いだまま腰を動かしていた趙雲だが、おのれの情欲の高まりにまどろこしくなり、口を離した。身体をすこし浮かし、腰だけを強く押し付けて律動させる。熱くうねる内部を掻き分けて突くのはおそろしいほどの快楽だった。
「・・っく・・ぁ」
「・・ぁ・やめろっ趙雲、中に・・出すな・・ッ」
 上擦った悲痛な声が、響き渡る。
「・・うるさいな」
 趙雲は片手でこの期に及んで理性をにじませた言葉を吐く口を塞ぎ、叩きつけるように腰を動かす。目の光が急に弱まったかと思うとぎゅっと目をつむり、馬超の身体が硬直した。とっさに趙雲は手を伸ばす。なんとか武袍を汚さずに馬超の精を受けとけた趙雲は、目を閉じて数度腰をゆらめかせる。どくりと、鼓動が跳ねた。強烈な高揚が包み込み、趙雲は馬超の中に放った。 


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