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XXIII 魅力

彼女の魅力は謙虚な姿勢を持ちながらの、幅広い知識と提案である 尊敬の念が敬愛に変わった
彼女の魅力は自立した女の観でもある
彼女の魅力は素直な姿勢でもある
彼女の魅力は明るい笑顔である
でも彼女は時折、頓珍漢な言動と振る舞いと仕草を見せる チョッとした我が儘も有る 偶に、はにかむ仕草! 
だから彼女は素敵な女性なのかもしれない 

京子と手を繋いで寝ている 彼女は俺が寝るまで俺の顔をジッと見ているらしい 京子は俺の寝顔を見て嬉しいのだそうだ 夜中に起きる事は殆ど無いのだが、偶然起きた時に見た彼女の顔は俺に安らぎを齎す天使の顔に見える 変な話だが男女間でも金銭的な授受が有って執り行われる場合は虚しいものである
一時の快楽程ツマラナイ事は無いかもしれない 一時の駆け引きがツマラナイなどと言ったら、瞬間に生きている人々からすれば非難囂々だね 快楽となる媚薬が他力本願では無くて、自力本願ならば謝らなければ為るまいね
異性に対して興味を懐き、相手が美しく見える時がある
清潔感が有って、自分自身を持ち合わせている女性とでも言うべきだろうか
ほのかな香りも大切である 悪戯な眼差しも時には男心を刺激する 時に背伸びをする姿も可愛く見える
んー 何と言ったら良いのだろうか 彼女が此れまで生きてきた姿勢、拘り方・考え方に魅了されてしまうのである
男として、俺自身として京子に出来る事は何だろう?
彼女は此れまでの艱難辛苦と言うものを、自分のスキル(Skill-intensive)としてきている
しかし、彼女を支えていたのは母子家庭の中での、母親の存在だったのかもしれない
彼女の母親には成れないが、彼女の母親に近づく事は出来るかもしれない
彼女の母親は、時に父親の強さも持ち合わせていただろうし、母としての優しさで彼女を包み込んだ時もあるだろう 自分にとって必要なものは・・ 強さと優しさと包容力かもしれない
彼女の母親が持つ強さは、旦那さんが中国人で有るが故の大陸的なと言うか、悠久の歴史と共に身に附いた性格を知り、日本人で有る近代社会を育て上げた、戦後の混乱期から高度成長期に我慢を虐げられた強さとを併せ持った方なのでは有るまいか・・? 島国で在る日本人だが故に、他国との接触は我田引水として考えるのでは無く、憂慮し思慮を広げ大きく全てを受け入れる寛容さが、今後は更に必要になるのだろうね

「京子、お腹に赤ちゃんは出来ていたのかい?」
「うーん まだ判らないよ」
「だって検査薬を買って来たら、当日の朝のオシッコにチョッと浸ければ判定が可能らしいぞ!」
京子が二人のカップに其々コーヒーと紅茶を入れてくれる
自分は珈琲派だが、彼女は紅茶を好む
「良く知っているのね」
「だって、薬局で訊いて来たんだもん」
「まさか、妊娠判定薬も買ってきたの?」
「否、京子が買って来て自分で調べると言っていたから、薬は買って来ていないけど・・」
砂糖もミルクも入れないコーヒーは香りと濃くを楽しむものだが、インスタントコーヒーで或る
とは云え、コーヒー粉の入った瓶を嗅ぐ時は・・ んー良い香りなのだ
思わず大きく吸い込んでしまうのは何故だろう? 
京子は紅茶の入ったカップを静かに置いた
「いいわ、私が調べるから余計な事はしないでね」
「どうしたんだ!? 何か気に触る事を俺が言ったか?」
「うぅん、いいの。気に触ったらごめんなさい。体調が少しだけ良くないのよ」

「こっちへおいで 抱締めてあげる・・」