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XIV 零細企業

「川嶋さん 部長がお呼びですよ!」 事務所の女の子から声を掛けられる
管内電話っうか、内線で呼んでくれれば良いのに・・ 同僚達から一斉に視線が向けられる
佐々木部長とは懇意にして頂いて偶に一緒に飲みに出る事も有った
「部長 お呼びですか?」 「あっ ご苦労さん 楽にして聞いてくれ 実は中国へ行って貰いたいのだが・・
彼を紹介しよう 彼はなかなか優秀なスタッフで川嶋君をサポートしてくれるだろう 互いに協力し有って・・」
中国に進出する為のプロジェクトには会社として問題点を抱えていた
現地へ派遣した担当者からの情報が少ないのである
今回自分が参加した背景には、現地担当者との通訳なのだが問題多し・・なのである
私が働く此処、信越物産は小さな商社なのだが、現地担当者の他に現地での調整役が居るのだが、
残念ながら彼は日本語が出来ない。中国での合弁事業には大概の場合は、中国側の有力者からの紹介が多かったりする
しかし、信越物産では相手のコネと人脈を信頼しすぎて、経営能力(当初は合弁先の企業が誇張されていた)の調査を怠り失敗した経緯がある
我々の様な小さな商社が成功する為には、日本と中国双方の慣習と法律に精通する調整役が必要であるのだが、日本語が出来ない彼は、我が社の人脈で探し出した優秀なMBA(経営管理の大学院と云うのは本当なのか?)卒業生らしいのだが、しかし彼は日本語が出来ない・・ 正直言えば、役に立たんじゃないのか!? 
「Although you do the presentation of our company this time, as for the contents of the labor did they understand?」(君は今回、我が社のプレゼンテーションを行なうのだが、仕事の内容は理解したのか?)
「Yes, I studied the purpose and demand and condition of company.」(はい、私は会社の目的と要求と条件を勉強しました)
「Regretfully, the relation between company and you would intend communication with that I do interpretation.」
(残念ながら、会社と貴方の関係は、私が通訳をする事でコミュニケーションを図るのだが・・)
「Although even I am that think, that there is the problem of intention understanding」(意思疎通の問題点が有ると、私も思ってはいるのですが・・。)
彼も英語は苦手の様であるし、正直言えば自分も多少は喋る事は出来るものの苦手である
況してや自分が通訳をして、歪曲した場合は誰が責任を採るのだろうか?
元々、彼も外国語は日本語では無くて、英語を選択した人間なので不安は募る
日本で言えば、知的クラスター創成事業指定地域に相応するであろう大学や、研究機関の集積を活かしたハイテクパークが、北京周辺に制定された「中関村科技園区」というのが在るのだが、中国人口がスライドされているっうか桁違いに大きいのだ 北京大学・清華大学を始め約70もの大学が存在し、200を超える研究機関、11000社に及ぶハイテク企業が集まり、常時活動する企業内研究者やエンジニアは50万人も居るのである 更に理工系を中心とした在学生の数は30万人にも上り、毎年3万人以上の大学卒業者と、6000人の大学院修了者がこれに加わっていく事を考えると、中国の産業活力は脅威であると同時に、魅力的に映るのである
しかし、日本で中国人若手技術者の評価は、我が社の様に通訳位として見ていないから、彼らも日本へ興味も持たないのかもしれないね 況して中国の工場現場と技術者・幹部とのギャップが日本人の感覚と懸け離れているし、仮に幹部や技術者を日本国内で研修させても、彼らが工場現場で働く事は無いのだ 彼らのプライドを高めると同時に、増長しない様に手綱を締め、しかも利害関係衝突のリスクを分析し、防止方策まで考え相乗効果を発揮しなければならないのだから、生半可な精神では持つ訳無いのである 中国の現状を勉強し、日本の優れたものを積極的に彼に教えていく事で、仕事は大きく前進するのかもしれないね 中国人には自己を犠牲にして公共に奉仕するという、本当の意味での愛国心がないから、アメリカと決裂して共産主義に走るしかなかったと云う説も有るからね 取り敢えず中国の急激な変化に対応し精度を上げる為に、他社の日本の成功事例の情報を集めるのが先決だと思う 同じ日本人同士なのだが、成功事例自体が数少ないのが残念では有るのだが、僅かな事にも望みを掛けなければならないのが我々中小企業なのである 素人のカウンターインテリジェンス(counterintelligence=対諜報活動)だねぇ・・!? 日本は良いと思うよ アメリカは留學生の就労を一切認めませんもの 今でこそ中国は豊かな国へと変貌するけれど、日本は中国からの大学生の経済的困苦を思い、一定限度の就労を認める様にしたのですが、その温情を仇で返す一部の恥知らずが跡を絶たない悲しい現状では、何れ政策変更の必要が有ると思いますな 実際日本人だから優れているとか、真面目と言う訳では無いし、全体数の僅かな人間に因って周囲が多大なる迷惑を被っている事も事実として有るのだが、全体数の仮に五lに問題が有れど、そのたった五lに因って被害に有った当人にしてみれば、100%の悪しき結果に成るのであるのだからね

情報が少ないのだから当然ながら、中国側事業の投資収益性(事業化調査)を信じるのだが、中国の場合は日本と違って国営企業時代(親方五星紅旗)の甘さが残っているので、中国で云うところの「貨比三家(フォビサンジャ)」を
実践する方が望ましいと思われる 要は複数の候補を競争させて、一番良い条件の相手と関係を結ぶのが良いのだ また安易に、相手からの「意向書(イシャンスー)」も簡単に考えるべきではない
拘束力が強い為に撤回することが難しいのである どの様な場合でも、良い調整役を持つことが大切である
財務・マーケティング・各種人脈とネットワーク、語学が堪能でビジネス社会にも精通する彼女(京子)は自分にとって魅力的に映ったのである・・!とは云っても、中国の複雑な人脈関係を敬遠して相手任せにする事は、中国に於いては命取りに繋がるので必ず自分達で確認し、交渉をしなければならない 怒られるかも知れないが、schizoid人間が多いかもしれない 相手企業の人事関係が把握出来ないまま、中国側の人事異動で経営方針までも変わる場合が有るからだ 事前に不透明な点を根気良く話し合い、調査確認した後に事細かく合意のメモを残さないと、リスクは削減されないのである どの様な場合でも積極的に自らが参加接触する事が、望ましいと思われるのが中国なのだ 明確な方針と戦略を持たないで中国へ臨む事は、自ら死地へ望む事となるのである しかし12億の人口は将来的には消費市場として魅力で有り、特許技術を持つ企業や日本国内市場でのノウハウと経験が活かせる企業は、中国はビジネスチャンスの国なのだ しかし巨大マーケットも、労働コスト上昇に伴い世界の工場としての魅力に不安が陰る 消費マーケットとして拡大するも賃金上昇は免れないが、ホームメードインフレとでも言うべきだろうか、でも今は先々の事を心配する必要は無いと思われるよね これから数余年が勝負かな?