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XII 話題

約束の時間を過ぎても彼女は出て来ない
如何したのかなぁ 仕事が間に合わなくて遅れているのだろうか?
約束の時間から四十五分・・ 後十五分待って出て来なかったら帰ろうかなぁ でも一方的に此方から無理を言った訳なので彼女に非が有る訳では無いし、今後の予定も立てられないし、どうせアパートに帰ってもツマラナイし、
あーぁ待つ時間が長く感じるのは何故だろうか!?
逢って何を話すというのだろうか
趣味?年齢?家族関係?それとも会社の話? 話題も何も考えないで、自分の都合、傲慢かも・・ 俺って駄目人間だよな それでいて、彼女の時間の遅れを気にしている・・ ハァー・・又しても溜息が出ちゃうよ
自分に自信が無いから仕事も巧く行かないのかもしれないな
時計を見れば約束の時間から一時間と二十分が経過している 若しかして別に出入り口が有って、帰っちゃったとかね そうだよ きっと彼女はもう会社に居ないのかもしれない それで彼女は自分を探しているかもしれない
となれば、彼女を探さなければならないぞ・・!?

どうするか 後もうチョッとだけ待つか・・! あれぇ!! 彼女が従業員通用口らしき場所から出てくるぞ 
俺の妄想だったのか 目に見えた彼女に、心の中でゴメンゴメンと謝る さてさて、どうする
車から降りて彼女に手を振る チョッと馴れ馴れしいかも・・!? 彼女が俺に気付いて此方に歩いてくる
「始めまして」 と彼女に声を掛けると・・
「我叫 卓(ウォ チァオ ツォー) 您 貴性?(ニン クイシン)」(私は 卓といいます お名前は何ですか?)
「I’m・・ いや、あの・・ 我是 日本人(ウォ シー リーペンレン) 
我 不会 中文!(ウォ プーホイ チョンウェン!) 不是!!(プーシー!!)不是!!」(中国語は出来ません!No !! No !!)
「謝謝(シェイシェイ)(有難う) 辛苦 了!(シンクー ラ)(御苦労様!)」
「だから・・ 解かんねぇーよ! あー でもシェイシェイは解かるけど・・ 日本人じゃなかったのッ」
「あッ ははッ! ごめんなさいねェ 驚いたでしょ?」
「えっー 日本人なのぅ!!」



彼女の名前は 卓(ツォー) 京子 と云った
お父さんは台湾人、お母さんは日本人なのだそうだが、父親は行方不明で何年も逢ってはいないらしい
でも父方の名字を名乗るのは父親を信頼しているからなのだろうか
彼女がこの会社に勤める前は、某コンサルタント会社でアナリストとして働いていたのだそうだ
しかし母一人子一人の生活で結局、母親の勤めるこの会社で働き始めたらしいのだが、勿体ないと思う
何故何故、職業に貴賤は無いのだが、知識を有するのに活用しないのは社会生活を萎縮させると思うけど、
当人にとれば家族ありきなのだろうか?

「突然押しかけて、こんな時間まで付き合ってくれて有難う御座います」
「我 吃好 了(ウォ チーハオ ラ)(ご馳走様でした) 今日は楽しかったです」
「また今度逢って頂けますか?」
「私も日本での友達が欲しいと思っていました しかし、中国人と分かると巧くいきませんでしたが、貴方は少しだけ中国の事を理解してくれそうです 是からも仲良くしてくださいね」
「ホンとですか! 是非ともお付き合いください!!」
彼女を家の近くまで送り届けると、彼女は丁寧にお辞儀をしてくれた
真面目な良い娘だと思う しかし、驚いたなぁ・・ !
丁度会社では、日本での企業が中国への進出を画策していたのだが、今回は自分にも運が向いて来たみたいだ
今回のプロジェクトに自分がスタッフとして、候補者に挙がっている噂を耳にしていたからである まるで心強い味方を得た様だった