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XVIII 童心

彼女と久し振りのデート
「何処かに往ってみたい所ってある?」
「んー じゃあ、動物園!」
「えーッ 遊園地とか映画館とかじゃあ無いの!?」
「でもホンとは、ウィンドショッピングでもいいんだよッ!!」
何でだろ あまりお金が掛からない方が嬉しいけれど、偶のデートなのだから気にする事なんかないのになぁ

車で市内から一時間程走った場所に動物園が在る
最初は猛獣の王者ライオンである 首の周りのフサフサの毛が威風堂々貫禄なのだが、お尻周りはチョッと貧弱な観が否めないぞ 続いて虎 愛くるしい表情なのだが、近くで見ると怖い 特にニタッ っと笑った表情も怖い でかすぎるのが怖い ペリカンもいるシマウマもいる 象さんだってキリンさんもいる 狸や狐だってスズメだっている
でも何でスズメが一緒にいるんだろ・・!?
彼女は大喜びだよ まるで初めて見るかの様に、はしゃいでいるよ
動物の表情を見ていると面白いけど、動物側から人間を見たらどの様に感じているのだろうか?
「あーぁ、また来たよ 人間は暇だねぇ」
「ほらほら、あそこの子供はポロポロとお菓子を零して・・ 汚いね」
「あっちのカップルはなんだい! 男が彼女を追いかけて・・」
人間の観賞の為に、遠い外国から運ばれてきて、母国を回顧するのだろうか?
自然の中で、着の身着のまま自由に生きて来たけれど、生と死の狭間の中よりも、今こうして人間に飼い生されて、病気や食べ物に対して不安の無い世界と、当人達にとって幸せはどちらなのでしょう?
狭い檻の中で運動不足になっちゃうね ホームセンターに売っている鼠の運動不足解消用のカラカラ(名称失念)の大型サイズとか、人間用の動く歩道の大型バージョンとかが有ればチョッとは、運動不足も解消されるかな
でも、大型獣は自ら運動不足を解消しようとは思わないよな 狭いながらも食事付きの我が家だものね
コレストロールなんかは、人間が提供する食事で注意しているだろうし、刺激も無いから惰眠を貪るだけだし・・ね
お菓子をポロポロと零す子供も居るけど、大人の世界にだって御飯をボロボロ零す人が居る
人間だもの勉強だって頑張る人も居れば、なかなか頑張れない人も居るし、仕事だって早い人も居れば遅い人も居るんだよな 皆が同時に頑張れれば好いけど、同じにするのは難しいかもね 特に子供のうちは無理があると思う 子供の時など授業に着いて来れなければ、先生とか学校教育の調和が取れない事を理由に遅れた子は置いてきぼりだよね まぁ自分も出来の悪い子だったので、悪い意味で良く分かる カといって中学校とか高校生ぐらいに成っても、授業中もそっちのけで周囲に迷惑掛けて好き勝手な事をやっている学生は、学生を辞めて独り暮らしで誰にも甘えず、社会の中で働いて日銭を稼ぐ方が、人間として立派だと思う 自律出来ないで、他人や親の責任に摩り替えるのは甘えているとしか考えられないからね まぁ親も会社も、当人に早くしろとか、頑張れとか、協調性を求めたり、精神世界を強いるのは場合によっては、歪んだ根性を植えつけてしまう事も有るかもしれないけどね でも横並びの考え方が、日本を此処まで平均的に押し上げた事も否めないし、難しいけどね
宗教家では無いが(宗教家に限った事では無いけれど、派閥を持つ者達かな!?) 自分達の意見を固持する事により、主義主張を押し延べて相手を攻撃する事で正当性を維持しようとするから軋轢が生じるのだよ

彼女と一緒 人間を信じ、相手の有るがままの姿を受け容れてくれる
彼女と一緒 自分と一緒に映画を観てくれる 音楽を聴いてくれる 自分の話を訊いてくれる 
彼女と一緒 穏やかな彼女の声に耳を傾けるだけで、心安らぎ癒されるのだ
彼女と一緒 アパートに花を飾り、料理を作ってくれる
彼女と一緒 自分の為に、彼女自身の為に綺麗にお洒落をし、綺麗に口紅を注し、明るく振舞ってくれる
彼女と一緒 彼女は一緒に楽しんでくれる 一緒に喜んでくれる 一緒に笑ってくれる

Reason with inevitable(理由有る必然) とでも云うべきなのだろうか?
周囲の出来事は、我々と無関係に存在するのでは無く、我々の意識が刻々と創り上げているのか?
生活が変わった 変化した生活は刺激であり、生き甲斐になるのだ 生き甲斐は会社業務にも反映している
彼女の存在は確実に、自分の生活に浸透し欠かせない女性となっている
彼女が自分にとって必要な人間なのだが、彼女にとって自分は必要な人間なのだろうか
彼女は自分の事をどの様に捉えているのだろうか
彼女に自分を尋ねる事は、寂しさへの確認なのかもしれない

彼女自身は何故、俺の事を良くしてくれるのだろう
アパートで水槽の金魚に問いかけてみる
「彼女を好きだけど、彼女の答えはYes?No?」
金魚は、こちらを向いて口をパクパクさせている 泥鰌は最初こっちを向いていたけど、お尻から泡をプクプク出して、アッチを向いてしまった コンコンと水槽を叩いても、田螺にはSurprise(驚き)も無いのだ
「今度、彼女を少し遠くに連れて行ってみようか?」
「・・・」
「犯す」
「・・!」 一瞬、金魚も泥鰌も、振り向いた様な気がしたのだけど・・ 気のせいだろうな
「acquaintance rape !?」