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XXXVII  定め

通院先の市民病院 患者で溢れ返る待合室 誰だって病院に来たくて来るのでは無い 体調変調だから病院に来るのだ たった十分の診察時間の為に二時間以上待つ事もざらに或るのが病院だよ 銀行でも市役所でもパソコンが導入されてOA化が進んでから、待ち時間も可也減ったと思う 何時の世の中になるか分からないけど、空港の手荷物ゲートみたいに通過しただけで身体の不具合をプリントアウトしてくれれば、効率的なんだろうけどね 
泣いている子供 疲れた表情のお年寄り 妊婦も居れば松葉杖の人も居る 此処は病院なのだから普段の生活とは違う人達で溢れている 明るい話題は病気から回復した時だよね お互いの会話だって不平不満の話じゃ聞く耳は持てないよ 具合が悪くても無理をしない でも出来る限り前を向く、相手と向き合う姿勢が大切なのかもね  
「京子!?」 通路に面して病院購買店が設置されている  病院管内の色々な人達が買い物に来る パン・飲み物から、脱脂綿・大人用オムツなど入院中病院内で使用する大概の物は揃っている その場所に後姿が京子に似ている女性を見つけた 近付いて後ろから声を掛けると、京子と同じパジャマ姿の別の女性だった 「すみません 人違いでした・・」 頭を下げて一瞬の間に溜息が出た そりゃそうだよなぁ 病院に入院・・!? でも有り得ない事でも無いな! 彼女は親娘二人暮しだから仮にどちらかが病に臥せった場合は、程度にも因るだろうが看護が必要に為る場合も考えられる 仮に入院しているとすれば、連絡も取れないだろうが何故会社にも、俺にも連絡を寄こさないのか? 自分の仮定の中で、病院から近くの交番まで車を走らせた 「すみませんが、市内の病院のリストか連絡先を知りたいのですが・・!」 担当職員が病院の場所を幾つか示してくれる 電話帳と照らし合わせて場所を確認する 十五分後に四件目の病院で、卓(ツォー) 朋子を発見した 正確に言えば卓(ツォー) 京子だった

お互いが育む事によって大きくする事も出来るけど、お互いの弱い傷口を繕って強固にする方が好いかもね
誰も考え方の違いが有るので、人に強制は出来ないけれど、自分は身体を併せる事で心が一つになると思っています 双方の気持が離れていたら無駄な事ですが、一片の気持が存在しているのなら、その後の気持は大きく傾くのではないのでしょうか? 女性は男性と違って気持を素早く突き放す事も有りますが、大きな受動態にもなりますね 何故でしょうか? 女は身近な目の前の事しか見ていないと思う事が度々だけど、進退を賭けた時の諦めの良さ!? も女の方が優れている様な気がするのですが・・ 全部が全部、全員誰でもとは言わないけれど、男女間の中でも、自分が男だからこそ知らない、知りえない女性像を探しているのかもね
優秀な精子を求める本来の種族保存本能が、駄目なオスを排除して、新たに素早く反応して素早く切り替えるのかもね 男の場合は一つ一つの技の組み合わせだけど、女は感性なんだよな 
創造性でも無く価値観では無くて、根本的な脳ミソの中の考え方が違うのだよ
山野草に興味を持って観るのは男 綺麗と思って見るのが女だね 
鉄道Nゲージを精緻の極みと思うのが男 そんなもん只の玩具だと思うのが女かな
音楽だけは似ているだろうか? テンポの良い曲から、バッハ・モーツアルト・ベートーベン・・ 演歌だって良いしポップやボサノバ・タンゴのリズムも面白い 其れでいながら曲調に歌詞に、思い巡らせて涙する事も有るんだよね 

どんな事にでも興味を持たなくなったら、その人間は生ける屍と一緒なのではないだろうか?
自分自身の中に有る種の虚脱感・無力感が形成されてしまうと何に対しても意欲が持てなくなる事は辛いけどね
興味を持ったと思ったら犯罪では悲しいが、日常生活と懸け離れた怪しい世界が、時に興奮させ興味から抜け出せなくなる事も人間の側面かもしれませんが、待っているのは刑罰なのだ 予備なのか未遂なのか既遂なのか犯罪の重責も違うし、被害者が被害届けを出すか告訴をするかに因っても変わってくるからね
でもね お互い女も男も人として産まれて来たら、自分の存在意義を求める事が葛藤として有ると思います
自分が、後世に残せる事は・・!?  会社での業績とか、才能が有れば音楽とか美術、或いは子供達?
虎は死して皮を留め人は死して名を残す事が望ましいけど、平穏無事に余生を終わる事も望ましい姿なんだろうか